2005年11月1日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】ルーラ大統領が二〇〇二年の大統領選挙運動中に、キューバから三〇〇万ドルの選挙資金を不法に受け取ったとする暴露記事が最新のヴェージャ誌に掲載され、政界に波紋を投じている。与党労働者党(PT)は根も葉もないデマだと否定、当のキューバも大使館を通じて事実無根だとする声明文を発表した。しかし野党は一斉に色めき立ち、議会調査委員会(CPI)での調査を求めるとともに、インピーチメント(罷免)に持ち込む動きも出始めている。
先週発刊されたヴェージャ誌によると、二〇〇二年の大統領選挙に出馬し選挙運動中だったルーラ大統領陣営に、同年八月から九月にかけてキューバから密かに三〇〇万ドルの不法資金が提供されたという。証言したのはパロッシ財務相がリベイロン・プレット市長時代に補佐官を務めた二人のPT党員で、一人は現金の運搬を担った。しかし二人はいずれも現金を確かめておらず、他の党員から聞いた話だとしており、このため一人は一四〇万ドルだったと話している。
資金はブラジリアでキューバ大使館員からPT本部に渡された。党本部ではそれをウィスキーの箱二個とキューバ産ラム酒の箱に詰め込んだ。証人の一人は、これをパロッシ財務相が当時選挙運動に使用していた小型セスナ機でカンピーナス市のビラコッポス空港まで運び、同財務相の当時の片腕とされていたバルケテ氏(昨年ガンで死亡)に手渡した。同氏は車でサンパウロ市ヴィラ・マリアーナ区の選挙事務所に運び込んだ。バルケテ氏が箱の中身は三〇〇万ドルの現金で、キューバから供与された裏資金だと供述したという。
これについてPT側は反発、根も葉もないデマだと否定している。大統領側近は寝耳に水だとして、ヴェージャ誌は先にもコロンビア革命運動(FARC)からPTに資金が流れていたとの記事を掲載したが、結局は証拠を提示しなかった経緯があり、今回も同様のケースだとの見方を強調している。
しかし野党側はことを重視、メンサロン(裏金)CPIに対し、当時のルーラ選挙事務所の会計報告を洗い直すよう求め、追及する方針を固めた。とくにメンサロン疑惑で党首が先週辞任したブラジル社会民主党(PSDB)は、今度はルーラ大統領が責任を取る番だとし、インピーチメントに持ち込むと意気込んでいる。自由前線党(PFL)もこれに追随するとの意向を示しており、大統領の身辺はにわかに慌しくなってきた。
ルーラ政権に移行してから政府はキューバ寄りとなり、就任早々ルーラ大統領も自らの希望でキューバ訪問を果たしている。これにならいPT要人は次々とキューバを訪問、このため両国間の通商は二〇〇三年に九〇〇〇万ドルだったのが、昨年は倍に近い一億七〇〇〇万ドルとなって絆が深まった。この背景にはジルセウ前官房長官の強い後押しがあった。前長官は軍政時代、軍部の圧力から逃れ、キューバに潜伏した過去がある。