2005年10月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】銃器や弾薬の販売禁止の是非を問う国民投票で「ノン」が圧勝し禁止は葬られたが、これに伴う論争、調査や証言で、これまで隠されていた数々の新事実が明るみに出た。銃器のヤミ販売もその一つで、関係者によると「パンを買うより簡単」とのこと。販売はファベーラ(スラム街)や市内のバール(酒場)に広がっている。販売ルートは悪徳警官が犯罪人から押収した銃器を横流しするのが大半を占めている。またこの業界ではピストルを貸し出すレンタル業も繁盛し、なかには「早働き」のための時間制貸し出しもある。しかし紛失したり押収されると場合によっては死の制裁が待っている。銃器は人の命よりも高価なのだ。
サンパウロ州保安局によると、昨年一月から今年九月までに犯罪人から押収したピストルは一万五千丁に上った。大部分が国産タウルス製の三八口径で、外国産に劣らぬ高性能で評判が高い。押収品は押しなべて登録番号が削り取られている。これが悪徳警官のつけ目で、押収品を捜査あるいは取調記録に掲載せず、ヤミ販売市場に横流しして副収入としている。
このほか盗品や警備員、麻薬購入代金欲しさからの販売があり、ヤミ市場に銃が溢れている。銃のヤミ販売の仲介を専用としている十八歳の男性は「パンを買うより簡単」だとして朝依頼があると、その日の内に用立てるという。
サンパウロ市東部のジャルジン・エルバ区では、ファベーラに行くと簡単に手に入るとしている。西部ペルジーゼス区ではバールに入って用件を言うと必ずどこからともなく仲介人が寄って来ると言う。私服警官によるオトリ捜査でないことが証明されると話は簡単に運ぶ。警察の取締りに対してはバールを一軒づつしらみ潰しに捜査するのは不可能だとして安心している。
ビルの警備員の男性(27)は護身用に銃を買うため販売店で値段を調べたが、高値で手が出なかった。そんな折、販売店で二〇〇〇レアルの銃がヤミ市場では七〇〇レアルであることを知り買い求めた。しかし誤って同僚を射ち殺す寸前までいったため、怖くなり一〇〇〇レアルで手放した。銃は簡単に入手出来るが、クソ度胸がついて何をしでかすか判らないと述懐している。
銃が高価で購入できない向きのため貸出のレンタル業も繁盛している。レンタルは通常一日三〇レアルから五〇レアルで、銃弾は使用した分だけ別料金で徴収される。また時間制レンタルもあり、一時間五レアルから一〇レアルとなっている。早働きの犯罪人に重宝がられている。
あるフェベン帰りの十七歳の少年は、外国製のピストルを一時間一〇〇レアルで借り、積荷強盗を働くべく仲間二人と目的の場所に出向いた。しかしトラックが出発していて失敗に終わった。銃のレンタル料を払わなければならない焦りから通りがかった乗用車を止めて奪い、分解工場に五〇〇レアルで売飛ばしてレンタル料を払った。
もしレンタルのピストルを紛失したり、警察に押収されたりすると多額の金額を請求される。支払い不能だと死の制裁が待っている。また犯罪でピストルの持ち主に捜査の手が伸びる場合も死から免れない。これがヤミ市場のオキテなのだ。