2005年10月28日(金)
各県警から選抜派遣されたポ語通訳者が参加する国際捜査官海外実務研修の一行六人と、埼玉県警の語学研修二人らが二十一日、サンパウロ市近郊にあるフランコ・ダ・ロッシャ市のGARRA部隊(盗難・強盗防止武装グループ)や、マイリポラン署などを視察し、市警との交流を深めた。この研修は、ポ語の実践能力を高め、当地の生活経験を積んで在日ブラジル人への理解を深めるために毎年行われている。
埼玉県警警部補の堀口均さん(31、埼玉県出身)は同実務研修団の代表を務める。「なんで銃器禁止法案に反対するのか、こちらにきて理由が分かりました。日本なら、まず反対意見など出ないでしょう。それが国民投票になること自体が違うなと思いました。自衛のために使わなければならない、その深刻さを実感できました」と研修の成果を語った。
同研修団は九月十三日に来伯し、二十六日までの約一カ月半滞在した。同時期に着伯した語学研修チームは約五カ月間研鑚する。
堀口さんは「交通事故や道案内など、犯罪以外でも、ポルトガル語を使う場面が日本で増えています。ブラジル人が犯罪に巻き込まれないように指導する予防の観点からも必要になっています」とし、ポ語の必要性は、多発する在日ブラジル人犯罪への対処だけではない点を強調した。
午前中はフランコ・ダ・ロッシャ市のGARRAという、市警の中でも重武装で有名な部隊から銃器類の説明を受けた。日本ではないマシンガンなどに一行は驚いたという。
午後からはマイリポラン署で、軍警との役割分担、仕事の流れ、捜査の実践的な情報などを交換した。さらに署内にある女性専用の留置所も視察した。
アントニオ・ジョゼ・ペレイラ同署長は「ここに収監されている四十七人は全員女性で、九〇%が薬物不法所持で逮捕されました」と説明すると、どよめきが起こった。
午後七時すぎから、マイリポラン同志会文化体育協会(中島ジョン会長)主催の歓迎カクテルが同会館で行われ、約百人以上が参加した。
市警の大サンパウロ圏統括責任者のネルソン・シウベイラ・ギマランエス氏は、「ブラジルの実状をよく見て、日本でブラジル人によくやってほしい」とお願いした。
林田繁行アントニオ同市長は、「我々の地域を視察に来てくれて本当に嬉しい」と感謝した。在聖総領事館の大熊博文領事も「日伯警察が友好関係を結び、両国の治安向上に努めていきたい」との抱負を語った。一行と市長らは記念品を交換し、交流を深めた。
埼玉県の語学研修で来ている同県警巡査、田辺晴朗さん(27、はるあき)は、「こんなに温かく歓迎してもらい感激です。一生の思い出になりました」と喜んだ。
留置場からVサイン 明るい雰囲気に視察団驚く
マイリポラン市警の留置場の収監者四十七人は全員女性だった。指輪や時計を付けているだけでなく、化粧はもちろん爪にマニュキアを塗るなど、まるで塀の外と同じ艶やかな雰囲気だ。
日本からの警察官グループと収監者は、鉄格子ごしに熱心に質問を交わした。収監者から「ここは自分で洗濯物を洗うけど、日本じゃどうなの?」と聞かれ、「洗う業者が別にいる」と答えると、署長の方に向かって「ほらね。あたしたちも日本へ行きたいわね」などと冗談を飛ばし、気楽な雰囲気がただよう。
四メートル四方の留置場に二十四人余りが押し込めれており、中庭をはさんでそれが二室ある。ある収監者はタバコを片手に「一人用マットレスに三人が寝てる。狭いし、夜は暑くて寝られない」と不満をこぼした。それを聞いた警官は、「日本の留置場は、ブラジル人から〃ホテルみたい〃と言われるぐらい人権がしっかりしてます」と違いを強調した。
「娘の恋人が九十グラムのコカインを自宅に隠していたために自分も捕まった」というダウヴァ・トマス・デ・アキノ・オリベイラ(45)服役囚は八年を求刑され、弁護士を入れて三年で結審した。腕に日本語で「夢」と刺青が入っており、「なんで日本語なのか」と問うと「特に意味はないわよ。カッコいいでしょ」と答えた。
警察官らが写真撮影をしてもいいかと許可を求めると、女性ら一団は、楽しそうに指をV字型にしてピースサインを出した。
「日本じゃ、こんな陽気な雰囲気は考えられませんね」とある参加者は感想をもらした。