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銃器販売禁止国民投票迫る=半数以上が意味を取り違え

2005年10月21日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】銃器販売禁止の是非を問う国民投票が二十三日に実施されるのを控え、賛否両論が白熱化している。国民投票は二十三日午前八時から午後五時まで全国で一斉に行われるが、国民には通常の議員選挙同様に義務となっている。
 今回の投票は販売の「禁止」の是非を問うもので、反対は電子投票器の「1番」のスイッチを賛成は「2番」のスイッチを押す。あくまでも「禁止」の是非を問うもので、販売に対する賛成か反対ではないことに留意すること。先の調査では、半数以上が意味を取り違えていたことが明らかになった。
 世論調査によると賛否両論は半数ずつで均衡を保っているとのこと。これに関連し、以下体験に基づいた数人の意見を紹介する。
 その一。六十歳の商店経営の女性は息子(31)をサッカーのサポーター同士の喧嘩で亡くした。息子は大のコリンチアンスのファンで、パカエンブー競技場に試合を観にいった帰り、パルメイラスのサポーターとの喧嘩に巻き込まれた。
 そのうちの一人が発砲したピストルの弾が背中に命中し息子は即死した。母親は独自に捜査して犯人を突き止め、警察に引き渡した。犯人は十二年の実刑判決を受けても平然としていたことで強い怒りを感じた。罪悪感のない悪人は密輸品を求めて武器を所持して歩くと思うようになり、市民も護身用に武器の携帯も妥当だと考えた。投票では「ノン」のスイッチを押すという。
 その二。大学生の男子(20)がサンパウロ市ベラビスタ区のアパートのエレベーター内で射殺された。防犯カメラが一部始終を撮影しており、犯人は同じアパートの住人(60)だった。犯人の男性は一週間後にパウリスタ通りの弁護士の事務所十階から飛び降り自殺し、この事件は大々的に報じられた。
 被害者の母親は犯人が逃亡している間、犯人が家族を殺害に来るのではないかと夜もおちおち眠れなかった。犯人が自殺した今でも恐怖が頭から離れないという。この折、護身用にピストルが欲しいと切に思ったとのこと。この気持ちは当人しか判らないという。当然投票は「ノン」。
 その三。サンパウロ市在住の男性実業家は三度強盗に襲われたが、所持していたピストルを空に向けて撃ったことで犯人らは逃亡して難を逃れた。また、三人組にレイプされそうになった女性を同様の手口で救い、英雄と奉られたこともあった。しかし、先妻が極度のノイローゼからピストル自殺をした苦い思い出もある。
 実業家がピストルを厳重に保管していたため、密輸品を買っていた。夫は、妻はピストルがあったから自殺を思い立った訳ではないとし、たまたまその手段に用いたものだと述懐している。青少年が父親の車を乗り回して事故を起こすように、武器も取扱知識と管理の徹底で事故は防げると強調する。従って家庭に武器を置くと事故につながるという云い分はナンセンスだと決めつける。投票は言わずもがなの「ノン」。
 その四。二十六歳の男性は背中に十四歳で死亡した弟の似顔絵を刺青に彫っている。いつでも一緒にいたいとの願いからだ。弟は友達の家でピストルで遊んでいた時に暴発して命を落とした。以来男性は銃器追放運動のボランティアとして活動している。今回も集会で体験を語り「シン」を説得して回っている。