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口蹄疫発生=政府に何ら落度なし=大統領が言明=畜産業界、狂気の沙汰と猛反発=パラグアイ国境越え感染か

2005年10月15日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】国内での口蹄疫発生に関してルーラ大統領は十三日、疫病発生の原因は飼育農家の衛生管理と予防接種投与の怠慢にあり、「政府に何ら落度はない」と言明した。これに対し畜産業界や野党の関係筋は強い不満を表明し、大統領発言は、責任転嫁はもとより狂気の沙汰だと猛烈に反発、政府の非に対して抗戦していく姿勢をみせている。またEUが輸入禁止の決定時にブラジル政府の防疫などが不備だと指摘したことからも、諸外国の神経を逆なでするものだと受け止められている。いっぽうで口蹄疫の原因や感染経路は未確認だが、輸出業者は生産を中止している。これにより国内向け供給が増え、シーズンオフを控え値上がり気運にあった肉の小売価格は下落すると見られており、畜産業界の打撃とは裏腹に庶民には朗報となっている。
 ルーラ大統領は訪問先のポルトガルで同国のソクラテス首相と会談後、共同記者会見で口蹄疫に触れ、責任は飼育農家にあるとした上で、農家は日々の糧を得るために肉牛を飼育しているプロであり、疫病発生は衛生管理や予防接種などプロとしての落度が原因だと言明した。また内外から政府の交付金の出し渋りが批判されているのに対しては、十分に支給されているとの認識を示した上で、現にロドリゲス農務相はこれについて不満を申し立てていないと述べた。
 これに対して同農務相は先週末から政府を批判し、今回の口蹄疫発生の裏には政府の交付金不足があると言及し、大々的に報じられていることから、記者団では首をかしげる向きが多かった。
 続けて大統領は、農家による防疫を徹底させるため、議会に予防接種を怠った者を厳罰に処すると同時に、三年間融資を停止する法令を上程するよう指示したことも明らかにした。
 しかし、感染経路がパラグアイの不完全な国境警備体制やMST(農地占拠運動)の不法侵入による可能性に話が及ぶと、それまでの前言をひるがえして、「責任を追及するのが本来の目的ではなく、現在行われている病理検査の結果を見た上で、現状を把握して具体的な対策を練ることが肝要で、これを徹底するよう関係筋に指示した」と強調した。また交付金にしても人口より多い二億頭の肉牛が飼育されている事実を鑑み、おろそかにはしないと述べた。
 さらに大統領は、ポルトガル首相に事情を説明した上で、サンパウロやパラナ州では検疫が完全で病疫の懸念はないとして輸入を継続するようEUへの架け橋となるよう要請した。同首相はブラジルの言い分を伝えると約束したという。
 大統領発言に対し、畜産業界は一斉に反発、今年の家畜の防疫予算として一億六七〇〇万レアルが計上されているのにこの内九〇〇〇万レアルしか給付されておらず、基本的な防疫しかできないのが実情だと訴えている。
 さらに感染経路としてはパラグアイからの侵入の可能性が最も高く、政府は密輸牛の取締りはおろか、防疫、検疫の設備も皆無だと指摘している。現に口蹄疫が発生したエルドラド市の近隣五市が立入禁止で封鎖されたが、隣接するパラグアイ国境では牛が自由に出入し、軍隊の国境パトロールも見当たらなかった。また疫病は人体の衣服に病原菌が付着して伝染することから、MSTにより持ち込まれた可能性もある。ロドリゲス農相は発言に対してのコメントは避けたが、今回の現地視察で飼育農家の衛生管理は完全だとの見解を示した。
 輸出業者は返品を強いられる輸出肉を第三国に転売すべく努力しているが、EUの如く高値が通らないことでジレンマに陥っている。今後は輸出用を国内で販売することになる。牛肉は八〇%が国内で輸出は二〇%だが、国内ではこれからのシーズンオフで値上げ気運だった。十三日の小売価格は上等品で平均キロ四・八〇レアルと先週の四・三〇レアルから一一・六%値上がりしたが、来週は逆転して値下げに向うとみられている。