2005年10月14日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙六日、九日】国内での銃器や弾薬販売の禁止をめぐり、その是非を問う国民投票が二十三日に実施されるが、それに向けて賛否の議論がテレビ宣伝も加わり白熱化している。それを受けて関係当局は銃器に関する統計を発表して関心を高めている。保健省によると、昨年七月から始まった銃器追放運動により、全国の発砲事故で病院に担ぎ込まれた人数は前年比で一三%減少した。いっぽうでサンパウロ州保安局は犯罪に使用される銃器は国産の軽量タイプが多く、なかでも三十八口径が重宝がられているという。法務省によると、この運動で供出された銃器は五〇万丁に達し、当初目的の八万丁を大きく上回り、狙いとした事故防止に貢献したと自負している。
保健省が国連のユネスコに提出した報告書によると、国内で二〇〇三年から二〇〇四年にかけて、銃器による事故で病院に収容された負傷者は一三%減少した。二〇〇三年は六千七百三十六人だったのが、二〇〇四年は五千八百六十七人で約一千人減となった。この数は負傷者全体の二八・八%に相当し、犯罪にからんだ負傷の六五・三%に次いだ。残りはピストルによる自殺と原因不明で二分された。自殺者は五百五十一人から四百五十一人へと一八%の減少をみた。
犯罪にからんだ負傷者は一万三千三百八人から一万三千二百八十二人へと〇・二%の減少、原因不明は七百三十四人から七百五十二人へと二・五%増加した。総数は二万千三百二十九人から二万三百五十二人へと四・六%減少した。
同省では銃器を手放すことで、家庭での暴発や不慮の事故が減少したのに加え、銃器を所有していることが気を大きくしたり凶暴性をかり立て、運転中の争いやバールでの、しなくても済む喧嘩を生む原因となっていると指摘、これらの防止に銃器供出は効果が上がったとした上で、さらに販売禁止でより効果が上がるとの見方を示している。
これに対し、今回の販売禁止に反対しているNGO(非政府団体)のビーバ・ブラジルは政府の(販売禁止の)宣伝用の数字だと反論している。同団体は、最近の銃器は性能が向上し、発砲すると命中率が高く、即死につながるため病院に担ぎ込まれる数が減っただけで、保健省の発表は実態にそぐわないと批判している。
いっぽうでサンパウロ州保安局が、今年一月から九月までに押収した一万五千丁の銃器を調査した結果、国産の三十八口径ピストル、通称トレイス・オイトンいわゆるサンパチが麻薬組織、強盗、殺人に最も使用されていることが明らかになった。
麻薬組織や集団強盗などには機関銃や自動小銃などの重装武器が使用されていると思いがちだが、実際にはこれらは一%に満たない。押収された一万五千丁のピストルは二万六千八百件の犯罪に絡んだもので、このうち四七・七%が殺人、四四・六%が路上強盗でサンパチが活躍した。
国内での銃器販売は銃身に番号があり、連警に登録されることで持ち主が判るようになっているが、押収されたうち三二・八%はこの番号が削られて捜査の目をくらましている。当局では国産品のサンパチで代表されるように、国内での販売を禁止することで犯罪減少につながるとの姿勢を示している。
しかし前出のビーバ・ブラジル団体は、国内で銃器が姿を消してもボリビアやパラグアイに輸出されており、密輸で逆輸入されるだけで逆に密輸組織の資金源を助長するものだと反論している。また軍警警官協会では会員四万人のうち三千二百人にアンケート調査した結果、八五%が護身用に銃が必要だとし、販売禁止には反対だと答えたという。また高価な密輸品でも犯罪人は一度の強盗で稼ぐ金額で支払えるので、意に介さず銃を買いまくると語っている。