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非日系のドキュメンタリー映画監督=微妙な2世心理描く=混血しつつ文化=残す日系家族の姿=「次はデカセギやりたい」

2005年10月14日(金)

 ドイツ在住の非日系ブラジル人監督による、日系家族の証言を通して日伯文化適応の様子を描いたドキュメンタリー映画『NIPO BRASIL- o jeito japones de ser brasileiro』(九十四分、〇五年、ブラジル人としての日本的やり方)の上映会と監督の講演会が八日午後、文協で行われた。約四十人があつまり、熱心に質疑応答する姿がみられた。
 日系家族が世代を経るごとに混血が進み、言葉を失いつつも、日本的な考え方や習慣を色濃く残す状況を描いた作品。エスペランサ婦人会がフェスタの準備をする風景、相撲を練習する様子などもはさみ込まれる。
 「スイスの映画会社がドイツで資本を集め、ブラジル人監督がサンパウロの日系社会の姿を描きました」という、監督・脚本を担当した非日系ブラジル人ロベルト・マニャンエス・レイス氏(31、ベルリン在住)のユーモラスな説明に、一同からは笑いがわいた。サンパウロ州バレットス市出身で、九三年に十八歳でスイスへわたり、翌年からドイツで撮影の勉強をする。今回が、本格的な監督作品としては最初のものだ。
 すでにスイスのチューリッヒ映画祭で公開された。「ヨーロッパの人は、ブラジルに対してリオやサルバドール、サンバとサッカーのイメージしかない。サンパウロの日系社会の映像は大きな驚きを与えたようで、好評でした」と報告する。
 会場から「どうしてドイツ系子孫の映画を撮らないで、日系人を題材にしたのか」と問われ、「ドイツもブラジルも同じ西洋文化圏なので、違うけれども、日系のもつ日本文化に比べると差は少ない。やはり、日系の方が題材としては興味深い」と分析する。くわえて、主役となった名嘉家が姻戚関係にあることから白羽の矢がたった。
 「戦後に思春期を迎えた二世世代には日本文化を拒否したい気持ちがあるが、その子ども世代になると逆に興味が高まっている」と語り、勝ち負けなどの影響で、日本文化に対して複雑な印象を持つ戦後世代の気持ちに、同監督は強い共感をおぼえたという。
 今回の作品には、ベルリンの国際交流基金の協力もあった。「できれば、日本へ行ってデカセギの様子を撮ってみたい。今回の作品を通して、日本の日系コミュニティの状況に大変興味を持った。なんとか実現できるようがんばりたい」との抱負を語った。