2005年10月12日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】マット・グロッソ・ド・スル州で肉牛の口蹄疫の発生が確認され、業界に衝撃が走っている。同州は牛肉の輸出で全国の半数を占めていることから輸出停止になることは必至で、これまで順調に推移してきた経常収支に及ぼす影響は大きい。業界では同州に限らず全国の牛肉輸出にも国際間で何らかの規制が加えられるのを危惧している。口啼疫は現在の所、同州のエルドラド市の牧場で確認されたが、政府当局は周囲二十五キロを封鎖、百人の検査官を派遣して全ての肉牛を検査している。同州では二千五百万頭の肉牛が飼育されており、最悪の場合すべてに感染する危険性もあるという。業界や関係者は一様に政府の検疫と防災体制の不備を指摘し、不満を表明している。
口蹄疫が確認されたのは、同州最南端、パラグアイとの国境に接するエルドラド市のヴェゾゾ牧場内で、飼育している百四十頭が感染していた。これらは直ちにと殺され埋葬された。また残りもすべてと殺処分される。
政府当局は同市のほか、イグアテミ、イタキライ、ジャポラン、ムンド・ノーボの各市に及ぶ二十五キロを隔離地域に指定し、人間はもとより動物の立入も禁止した。また、検査官百人を二十一グループに分けてこの地域で飼育されている肉牛六十八万五千八百頭の検査を始めた。さらに全州に波及する可能性もあることから、検査を広げるとともに予防接種も行う。
口蹄疫は牛や羊、豚などに感染。感染すると高熱、食欲不振、多量のよだれにより衰弱、死に至る。治療法はなく、感染した動物は焼却処分するしかない。感染した肉牛からは口蹄疫のO型ウイルスが検出されたが、それ以外の詳細は明らかにされていない。感染経路も不明で、関係者はパラグアイの肉牛が国境を越えてしばしば侵入することから、それを感染源とする見方もある。またインジオの不法侵入で、人体から感染した可能性もあると見ている。
同州の牛肉輸出は月平均二八三〇万ドルの実績があり、口蹄疫発生により差し止めになるのは必至で、被害は甚大なものとなる。貿易局では昨年の同州の牛肉輸出は一九億六二〇〇万ドルで、今年は二八%増の二五億ドルを見込んでいただけに落胆の色を隠せないでいる。
しかし政府筋では今回の問題は他州の輸出には波及しないと見ており、当初予想の八〇億ドルを達成できると踏んでいる。昨年は六四億ドルで、今年一月から八月まで五三億ドルの実績となり、昨年同期の三九億ドルと比し三四・五%増となったのがその所似だ。これにより牛肉輸出は世界でトップの座を維持するとともに、国内でもこれまでトップだった大豆をしのぐ勢いを見せている。
ただ気がかりなのは将来的に外国勢が取る措置だ。例えば昨年六月にパラー州で発生した件で、同州は牛肉を輸出していないにもかかわらず、ロシアは六カ月間ブラジルからの輸入を全面的に禁止した。後で判ったことだが、パラー州とパラナ州を取り違えていたとの裏話もある。またアメリカはようやく生鮮肉の輸入に踏み切り交渉が大詰を迎えているが、今回の出来事でどう出るか注目されている。
口蹄疫発生のニュースでサンパウロ州の二大加工メーカーは早くも同州の牛肉の買付停止を表明した。また畜産取引所では肉牛の値段が上昇気運にあったが、十日の取引では前日のアローバ当り六十レアルから五十八レアルへと三・三%の下落となった。
同州当局は政府が国境での検疫を野放しにしていると指摘し、同州への畜産部門の予算一五〇〇万レアルのうち一九〇万レアルしか交付していないとし、検疫や予防、インフラ整備が満足にできないのが病気発生の原因だと不満をあらわにしている。