2005年10月8日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】国会法務委員会が裏金疑惑で議員権はく奪を前提に捜査の開始を規律委員会に上申したことを受けて、はく奪対象の党議員六人を抱えた労働者党(PT)は、これら議員に対し議員辞職を勧告する方向で調整する方針を固めた。六議員も承諾している。同党では九日に選挙で選出される党総裁や幹部からなる執行部で正式決定し、実行に移す予定。PTは、スキャンダルが長引くことがルーラ政権および党のイメージダウンにつながり、来年の選挙に不利となることから疑惑議員を辞職させることで政局混乱を収拾することにした。その見返りとして来年の下議選に党公認として出馬させ、全国的に支援する約束をしている。つまり名を捨て実を取る作戦に転じた。
PTではジェノイーノ前総裁の失脚を受けてジェンロ総裁が就任したが、党内のあつれきとジルセウ前官房長官(元総裁)の確執から今回の総裁選の出馬を見送り、事実上党執行部から離れた経緯がある。ジェンロ元総裁は、疑惑議員は来年の選挙で党公認としないとの路線を採り、党内で対立していた。今回の出馬見送りでこの垣根が取り除かれたことで、反対派は議員辞職および来年の党公認が可能となった。
疑惑議員らは、ひとたび規律委員会の捜査が開始されると議員辞職の届出が受け付けられず、国会に上程された場合は議員権はく奪の議決を待たねばならない。仮にはく奪が決定すれば、二〇一五年まで参選の権利を失うことになる。
すでに規律委員会の調査は始まっている。ジルセウ前官房長官はこのため議員辞職の権利を失い、規律委員会の決定待ちとなっている。前長官はあくまでも徹底抗戦の姿勢を崩しておらず、規律委員会の捜査差し止めを連邦裁判所に提訴している。
PT幹部らは、五カ月間にわたる裏金スキャンダルでルーラ大統領および党の受けたダメージは大きく、これが長引くと来年のルーラ大統領の再選と党の議席に支障をきたすとして、政局混乱に終止符を打つことを至上命令にしていることを明らかにした。今回の議員辞職勧告もその一環で、政争という政治的問題で告発された以上、真偽はともかく政治的に対応するしかないとして、名を捨てて実を取るために議員らの権利と立場を維持するのが党の役目だとの立場を強調している。
灰色議員と名指しされた六議員はいずれも身の潔白を主張しているが、党の勧告に従って議員の辞職を表明している。辞職を表明しているクーニャ元下院議長は法務委員会で釈明しようと試みたが、その場を与えられず一方的に規律委員会に告発されたと不満を表面し、たとえ国会で議決に回されても正当性を主張し勝つ自信はあったと話している。また同じくルイジーニョ下議も、秘書がヴァレーリオ氏の口座から二万レアル引き落としただけで議員権はく奪される訳がないと気勢をあげている。
いっぽうで政府および与党支持を日頃から公言しているジョビン連邦最高裁長官は、一連の法務委員会の決定に対し、疑惑議員の言い分を聞かない決定は公平に欠けるとの見解を示した。これにより関係者の間では、国会での規律委員会による追及が議員辞職で決着がついた後、司法による議員らの追及は手ぬるく、最後は不問にされるとの見方が強まっている。