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薬の相互作用と副作用=医療システムの弊害が助長=安全で正しい服薬方法を知ろう

健康広場

2005年10月5日(水)

 高齢者は一般に慢性疾患が多く、処方薬や市販薬など一日に多くの医薬品を服用している。加齢に伴って、体内の水分が減少。薬を希釈しにくくなるため、作用を長引かせ副作用のリスクを高めてしまう。また専門医がそれぞれの立場で処方箋を出せば、複数の薬による相互作用が健康に悪影響を及ぼしかねない。医師には可能な限り多くの患者を診察して、収入を増やそうとする心理が働きがち。その結果来診者一人当たりの時間が短縮され、ほかの持病や服用中の医薬品などを聞き漏らす恐れがある。安全で正しい服薬をするには患者、医師、薬剤師の連携が欠かせない。

 「薬に副作用があるのは仕方がないこと。例えば化学療法だって、がん細胞を攻撃する反面体、ほかの部分に悪影響を出すことだってありますから。そのバランスをどうとっていくのかが、課題でしょう」。
 日伯友好病院の大久保拓司院長(69、二世)は、副作用を理解した上で服薬方法のあり方に注意するよう強調する。
 糖尿病、高血圧、コレステロール……。加齢に伴って様々な病気が表れやすくなる。高齢者は若い人に比べて、多くの医薬品を服用。その数は一般に処方薬が四種類、市販薬が二種類といわれる。量を増やしたり、まったく飲まないなど、四割は医師の指示に従っていないらしい。
 年齢を重ねるにつれて、体内の水分の量が減少。代わりに脂肪組織の量が増えていく。その結果高齢者は薬を希釈する水分が不足しがちで、水溶性の薬は濃度が濃くなる。
 さらに薬を貯蔵する脂肪組織が比較的多いため、脂溶性の薬は体内に多く蓄積。新陳代謝の機能が衰えて、腎臓も薬を尿中にうまく排泄できなくなる。若い世代に比べて副作用は二倍以上とされるだけに、無視できない。
 例えば精神安定剤。ジョゼ・カルロス・ヴィエラ医師(老人科)は「正しく飲まないと、高齢者を錯乱状態においてしまう」と警告する。一部の抗うつ薬には抗コリン作用があり、高齢者は特にこの影響を受けやすいからだ。
 錯乱のほかに(1)眼のかすみ(2)便秘(3)口の渇き(4)ふらつき(5)排尿困難(6)膀胱の制御喪失──を伴う。
 高齢者は複数の専門医にかかるのが普通だ。医者がそれぞれの判断に基づいて処方すれば、医薬品の相互作用で病状を悪化させたり、新たな病気を発生させることもあり得る。
 大久保院長は「患者一人に対して、たくさんの医者が関わってくる。病院に老人科があってそこの担当医が統括するようになれば、薬の相互作用による弊害を防ぎやすい。でも患者さんがいろいろな病院に通院するとなると、データーの共有は難しい」と明かす。
 医者は本来、病歴や服用中の薬などをじっくり尋ねなければならない。給与は診察件数にかかっているから、診察を早めに切り上げてできるだけ多くの患者を応対しようとする。
 「今のシステムには、問題が多い。患者さんも受身になるのではなく、疑問や悩みをぶつけていくことも必要なのではないか」(同院長)。
 医薬品の相互作用や副作用を緩和するには次のようなことがお勧めだ。(1)医師の指示なしに服薬しない(2)心臓病専門医などに診てもらう時には、病状やそれまで飲んだ薬についてすべて話す(3)処方された薬で副作用が起こったら、すぐに主治医に知らせる(4)診察にいく時、薬の箱を持参する(5)常に老人科に相談する。

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