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外国人労働者は日本を見限ったか

 日経ビジネス7月28日号で出た《日本を見限る外国人労働者》という記事を読んで、少々考えさせられた。日本で働く外国人総数71万7504人のうち4割を占める中国人は増加傾向を止めて横ばいに、2位のブラジル人は減り始めた―というものだ▼技能実習制度で来た中国人は《日本の進んだ食品関係のノウハウを習得し、地元でいい職を得ようと夢見て来日したが、低賃金で希望と違う仕事をやらされ続けたことに嫌気が差したようだ》とある。10、15年前からデカセギが批判している内容が、今さらながらに繰り返されていることに驚く▼日系人に関して言えば、そんな幻想はとっくの昔に消え、もっと現実的になっている。だからブラジル人に関しては日本の派遣会社アバンセの林隆春社長が記事中で《現地の日系人コミュニティの中で、日本を見限る動きが広がっている》と警告しているのは腑に落ちる。事実、8日付本紙記事《製造業中心に求人が回復》でも、求人増だが求職者が少ないという現実はそれを裏付ける▼日本政府は東京五輪に向けて建築現場の人手不足を解消するために、技能実習制度を3年から5年に一時的に延長する方針を出したが、いかにも対症療法的だと感じる。外国人労働者を呼ぶなら、しっかりとした「移民政策」を考えるべきだ。来年はデカセギ開始30年だが、その気配はない。最初からその気がないなら、日本人の人口を増やすことを最優先すべきだ▼将来を真剣に考えはじめた外国人が日本を見限ってきたのなら、中途半端な導入政策は一時しのぎに過ぎない。なぜ日本人の人口が減るのか―そこからちゃんと考えるべきだろう。(深)