2005年9月17日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】最高裁のヴェローゾ判事は十五日、ジルセウ前官房長官に対する議員権はく奪審議を一時差し止める仮処分を下した。下院倫理審議会から議員権はく奪対象となっていた前官房長官は、議員権の保持工作で最高裁から手が差し伸べられた。すでに最高裁から審議一時差し止めを容認された下議六人は、強力な仲間が参加したことで祝杯を挙げた。下院執行部は、広告業者ヴァレーリオ氏から裏金を受領した下議十六人に二十二日までに、監査委員会で弁明する機会を与えることにした。
最高裁は前官房長官にハードな審理への対処に備え休憩時間を与えたが、仮処分以外にブラジル労働党(PTB)の告訴もあるので、台風一過とはいかない。しかし、初戦で白星を取ったのは幸先がよい。前長官への仮処分は、ジョビン最高裁長官が六人の労働者党(PT)議員に下した仮処分のオマケといえそうだ。
下院を追われたジェフェルソン下議の言い分には耳を貸さなかった議会調査委員会(CPI)も下院監査委員会も、PTの言い分は聞いてくれるとジルセウ下議が楽観視している。最高裁が上院にビンゴCPI設置を容認したとき、野党は鬼の首を取ったように喜んだと同下議は評した。最高裁がPTに好意的なことで、今度は巻き返しができると踏んでいる。
最高裁の仮処分はPT勢に弾みをつけた。これで数々の告発や告訴を握りつぶせる見込みができたと同下議はいう。当面の敵は野党ではなく、PTBらしい。仮処分位で気を緩めないし、ジェフェルソン元下議のように、無様な二の舞を踏まないと友人らに漏らした。
ジルセウ下議は十九日に最高裁に出頭し、同下議に対する全ての提訴無効申請を行う。ライバルが退けられた今、情勢は変わった。PTBが倫理審議会に提訴していた申請書類も一掃するという考えだ。
PTBの提訴を棄却できなくても、弁明の機会は三回ある。倫理審の口頭審問と提訴上程での応答、本会議の抗告弁論。これでも敗走し倫理審議会がはく奪対象と決議するなら、最後の手段は最高裁だ。全てのはく奪決議を無効と訴える。最高裁判決までだけで三カ月の時間が稼げる。
ジョビン最高裁長官によるPTびいきの仮判決を不満とする人々が、ヴェローゾ判事に却下を期待していた。しかし、それに追随して仮処分を補足したため、非難が同判事に集中している。同判事は下院執行部へ告訴書類の提出を求め、仮処分の見直しを行うと弁解した。
議員権はく奪対象にあった連立与党の下議らも、いっせいに最高裁へ一時差し止め申請に走った。PTでは裏金スキャンダルも一段落しそうなので、内輪で前祝いをした。元下議一人の口を封じたことで、政治危機は予想通り片付きそうだ。裏金は存在しなかった。大統領は知らなかった。臭いものにはフタを。
ジェフェルソン元下議の弁護士は、弁明の機会を与えず八百長的に審理した下院の片手落ち表決に対し、無効申請を最高裁へ行った。元下議側の証人は,証言の機会を倫理審によって故意に阻止された。膿が出されないまま、傷口は塞がれようとしている。