まさか―これほどの判決が出るとは思わなかった。米国に在住する日本人が、海外に住む日本人にも選挙権をと訴えていた裁判は、一審と二審とも全面的に敗訴していた。云わば「門前払い」なのである。それがなんと、最高裁では逆転し「現在の公選法は憲法違反」と断罪し,次の選挙では在外邦人も小選挙区で投票する権利があると認める画期的な判決を出したのだから驚いた▼いや、さすが最高裁判事殿は違うと嬉しい限りである。しかも、国に対して原告に損害賠償の支払いをも認めるという異例の判決である。あの1998年の公選法改正で在外邦人にも、選挙権の行使は認められた。だが、あれは比例区に限られていて小選挙区には投票できないという制限がついている。これに対する不満はあったし、裁判に訴えるまではいかなくとも、異議を唱える邦人は多くいた▼勿論、この裁判の勝利ですべてが解決したとは云えない。サンパウロ総領事館の問題に限っても、管轄地域が日本の約4倍の広さを持っている。つまり、遠くに住む邦人は、北海道から鹿児島まで行って投票するという大変な「仕事」になってしまうなど難しい課題はいっぱいある。担当の領事は「各地の文協頼みになるかも」と、思案しているようだが、小さな難問はまだまだ多い▼それともう一つ。在外有権者は、もっと自覚を深めて欲しい。今、海外には約72万人の有権者がいるが、登録者は8万人余。先の選挙では2万1000人が投票したに過ぎない。この事実を反省してもっと「政治への参加」を心がけたい。(遯)
05/09/17