いまごろ、移住地を造成して集団移民を入れる国がある。隣国パラグァイである。ただし、資金を十分に携行した移民である▼日本政府の機関がブラジルやパラグァイに移住地をつくって、移民を送り出したのは、もっとも最近でも四十年以上前になる。だが、今や「移住地の造成」「海外雄飛」などは死語と言ってもいい▼仮に今、日本人のだれかが大資金を投じてパラグアイに移住地をつくり、移住したいといえば、パラグアイ政府は承諾するかもしれない▼現実は、四十年余前とは様変わりし、日本は少子化で土台余剰人口がない。身を粉にして働く必要がないと考えているし、きつい労働は外国人にしてもらえばいいとなる。外国に移り住んで、農業を営むなど、考慮の外のはずだ▼さて、パラグァイのカアサパ県に移住するのは、ロシア系ドイツ人六百世帯である。六千万ユーロが投資されるという。今、パラグァイ人が、移住地の下部構造を造成中で、今後五年間に各世帯は十万ユーロを携行して移住する▼移住する目的は、ソ連崩壊後、ドイツに移住したが、ドイツ政府の子女教育政策に従えない、ロシア系であるがための差別に抗し切れないから、というものだ▼わが母国は、裕福なだけでなく、こうした「問題」は一切生じる余地がない。若者が学校にも行かず、働かなくても、ていねいにその対策を講じてくれる。昔「お前はブラジルにでも行って苦労して来い」といわれた人もいよう。親のこの〃叱声〃もまた死語なのだ。(神)
05/09/16