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コラム 樹海

 週末にサンパウロ市で起きたデカセギ家族五人殺害事件はまれにみる残虐なものだ。しかも、目前に五十周年式典を控えたコチア青年の一人とは――。米倉貞さんら家族五人は一晩がかりの拷問のすえ殺された。言葉にならない怒りと悲しみを覚える。▼土曜早朝、娘と一緒に息子夫婦が十一カ月の赤ちゃんを連れて日本から一時帰国した。六年もデカセギした息子や娘から、いろいろな日本での苦労話などを聞き、米倉さんも久々の家族団欒を楽しんだだろう。待ちに待った再会だ。息子が時差ぼけの頭を治そうと早めに床についたあと、その晩に二人組の賊が侵入した▼五千ドルの現金をとるだけでは飽き足らず、家族全員を電線で縛り上げ、タバコの火を押し付けて消したり、棒で殴ったりする拷問までして執拗に「銀行の金をよこせ」と要求した。犯人の一人を、目隠しをされた米倉さんが声で判別して名前を言い当てために殺されたという。容疑者は息子の幼なじみ。付近で守衛をやっており顔見知りだった▼この事件は日系社会に大きな警笛を鳴らした。特に空港からの帰りは要注意だ。犯行前日の金曜日に「息子はいつ帰るのか」と問う匿名電話があった。周囲の人に、家族が日本に行っていると安易に漏らしてはいけない。日本で稼いできたなどと、口が裂けても自分から吹聴してはいけない。今回、伯字紙やテレビで大々的に報道されたことで、さらにデカセギ狙いが増える可能性すらある。しかし、いまどき親族に一人もデカセギのいない家を探すほうが難しいか。 (深)

05/09/15