2005年9月7日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙八月二十七日】経済の歴史を調べると、モラトリアム宣言をしたのは途上国だけではない。ドイツも一九二二年、歴史上未曾有のインフレに見舞われ、モラトリアムをやった。
さらに遡ると一五〇一年から一九〇〇年の間に、オーストリア六回、フランス九回、ギリシャ五回、ドイツ六回、ポルトガル六回、スペインが十三回もモラトリアムをやった。
アルゼンチンが行った部分的モラトリアムなど経済史では珍しくない。ブラジルも部分的モラトリアムなら、為替の先付け固定制や特別価値修正制度、別件価額表など色々な詐欺的カラクリを弄した。
誰でも疑問とするのは、世界一の借金国米国が債権国を引っ掛ける危険はないのかということ。今のところヤリクリで影響は最小限に抑えている。しかし、最後の晩餐で酔い続け何ら経費削減努力をしないなら、必ず米経済が破綻する日は来る。
中国だけで、六億五〇〇〇万ドルの米国債を持っている。米政府は中国に人民元の切り上げを要求し、中国通貨での決済を考えている。ドル通貨がレアル通貨に対し下落を続けるなら、日本を初め各国通貨が米国に対し調整を要求する。
しかし、米国は通貨調整に応じない。それは米国版モラトリアムになり、米国発世界大恐慌になりかねない。仮に米国が三〇%の通貨調整を行うと、世界各国の中央銀行は、手持ちの米国債を三三%失う。
それはあり得ないことではない。金融グロバリゼーションは、むしろそれを望んでいる気配さえある。国際金融市場を国際通貨基金(IMF)と世界銀行の下に統一し、EUが両国際機関を支配する野望が見え隠れしている。
ドル通貨の危機管理を各国別で行うのは、無意味という意見がある。国際的通貨危機を一括管理するため、世界単一通貨へ移行させる案がチラホラ見え隠れしている。恐ろしいことだが、世界単一通貨の可能性は否定できない。
だからドル通貨危機は、世界単一通貨への伏線といえそうだ。国際金融システムの崩壊が何時起きるかは分からない。ただ世界単一通貨への下地が完成したことは確からしい。