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感染源動物のトップはコウモリ=狂犬病が増加傾向=咬傷後はすぐに手当てを

健康広場

2005年9月7日(水)

 人を含むすべての哺乳類が感染し、発病するとほぼ例学なく死に至ると言われる狂犬病。ウイルスの感染源動物は国や地域によって異なり、中南米は主に犬とコウモリだ。ペットとして飼われる犬は、ワクチンの接種が容易。また、病気の恐れがある野良犬を保健所が見つけて捕獲すれば、野良犬から人への感染も食い止めることができる。しかし、コウモリは野生動物で監視が困難だ。狂犬病(人間)の発生件数は、二〇〇三年から右肩上がりの傾向を見せ始めた。感染源動物は、コウモリが〇四年に犬を上回った。

 ■ミナス北部に衝撃
 農家のサンドロ・セルジオ・ダ・シウヴァさん(29)が今年八月二十七日深夜、ミナス・ジェライス州北部のパウミタルで狂犬病に感染した吸血コウモリにかまれたことが原因になり、死亡した。この地域で初めてのケースだった。
 シウヴァさんは六月中旬、ミカンの樹に登って降りる時にコウモリを踏み、足をかまれた。保健所や家族の注意にもかかわらず、医師の診察を拒否した。八月十五日になって傷口に激痛が走り、自宅から四十キロ離れたグラン・モゴル市内の病院に運ばれた。既に、手遅れだった。
 サンパウロ殺菌研究所によると、国内には百四十種のコウモリが生息。このうち、狂犬病のウイルスは三十一種から、見つかっている。米国ではウイルスが特定されたのは全三十九種のうちの三十種だから、ブラジルの狂犬病を持つ種の割合は米国に比べて低い。食性に関わらず、すべての種類のコウモリがウイルスを伝染させる恐れがある。
 ■症状
 源宣之氏(岐阜大)の報告によれば、体内に侵入したウイルスは末梢神経を介して中枢神経組織に達する。そこで大量に増加。各神経組織へ伝わって唾液腺で増殖する。発病した人や動物は咽喉頭の麻痺により唾液を飲み込めない。その結果、ウイルスは唾液と共に体外に排泄される。潜伏期間は一定せず、平均は一~二月だ。時には七年間の例も人で報告されている。
 犬の場合、物事に極めて過敏になり、狂躁状態となって目の前にあるものすべてにかみつく(狂躁型)のが主な症状。その後全身麻痺が起こり、昏睡状態になって死亡する。発病後終始麻痺状態の動物も認められている(麻痺型)。
 ほかの動物や人も基本的には犬と同じ。人は水を飲む時にその刺激で咽喉頭や全身の痙縮が起こり、苦痛で水が飲めないことから「恐水症」とも呼ばれる。潜伏期間が長いので、咬傷後傷口を丁寧に洗浄し、ワクチンを接種することで発病を防ぐことが可能だ。
 コウモリは病気を持つものと健康体のものを監視するのが極めて困難なため、まとまった調査ができずデーターが不足している。発病したコウモリは、昼間に活動しているのが大きな特徴だ。筋肉が震えており、行動をコントロールできなくなっている。
 ■狂犬病の推移
 保健省の統計によると、狂犬病(人間)の発生件数は一九九〇年~九三年まで年平均六十三件だった。九四年~〇一年までは年平均二十五件に減少。〇二年には、十件になっていた。〇三年から右肩上がりに転じ、〇四年に二十九件まで増えた。
 感染源動物のトップは犬だった。昨年初めて、コウモリ(二十三件)が犬(六件)を上回った。コウモリから人への感染は、過疎化して草食動物があまりいない地域に多い。コウモリを捕獲する猫を介して、人間に感染するということもあり得る。
 行政機関は少なくとも年に一回、犬や猫の予防接種を実施し、地域住民への啓蒙活動を展開していかなければならない。一般市民も(1)異常な動物を見つけたら、触れないで行政に通報する(2)ペットの様子に注意を払う(3)咬傷後、すぐに病院に向かい、動物を殺さないこと──などの行動が求められる。

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