2005年9月3日(土)
サンパウロ市近郊のジャカレイ市にあるコチア農業学校で、ブラジルを含む南米諸国からの農業研修生の実習が始まった。八月初旬に入所した八期生二十三名だ。二〇〇〇年に始まった実技研修は七期までに南米八カ国(アルゼンチン、チリ、ウルグァイ、パラグァイ、ボリビア、ペルー、コロンビア、および、ブラジル)の研修生二百十四名が卒業している。
研修期間は十一カ月間で、研修生たちは寮生活を通して、団体生活と異文化理解を深める要素も兼ね備えている。寮は日本政府の草の根無償資金の助成で建設された。農業と環境は不離一体の関係にあるため、環境教育も欠かせない。校内には経団連自然保護基金(本部・東京)の助成で建設された環境教育センターと育苗センターがあり、研修生たちは日常生活の中でいろいろな樹種に触れる機会に恵まれている。
今回は、先輩の七期生三名がボランティアとして学校に残り、後輩たちが寮生活や実習作業に慣れるまでの補助的指導を行っている。このような連係意識も寮生活の中で培われきたようだ。
南米農業後継者研修は、オイスカ・ブラジル総局(高木ラウル会長)が米州開発銀行(本部・ワシントン)の無償資金協力を受け、コチア農業学校の運営母体であるコチア農業教育技術振興財団と提携して行っている広域プロジェクトだ。緑肥や堆肥や鶏糞などを豊富に活用した有機農法が指導の基本となっており「コチア学校の野菜は味が良く、長持ちもする」と地元だけでなく、サンパウロ市内でも愛好者が増えている。
野菜栽培を指導している菅原エドワルドさんは「今ではジャカレイ中央市場にも出荷している。ハンバーグ店も顧客となっているし、八百屋仕入の買いつけに来る頻度が増えている」と健康志向の意識が住民の間に徐々に広がっていることを示唆している。
エドワルドさんはジャカレイとサンタ・ブランカ二市の「小農の会」の営農指導も行っている。苗木は学校で育て、「小農の会」に提供している。これら「小農の会」は地元の食堂(複数)と販売契約を結ぶほど信頼を得ている。コチア農学校の普及活動が地域社会に浸透しつつある一面だ。
ネット・メロン栽培を指導しているのは佐々木エジガルドさんだ。今期は四種類(ロックスター、ルイス、マクシン、モナミ)二千二百本の苗木を育てている。すべて日本種だ。「苗木は順調に育っており、『第五回メロン祭り』を十二月十一日、日曜日、に開催できる予定です」と自信のほどを示している。ネット・メロンも実技研修の一環として化学肥料や農薬なしで栽培されるため、さわやかな甘みで好評を期待できそうだ。