2005年8月31日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】先週末にかけてメキシコやアメリカの東部を襲ったハリケーン「カトリーナ」がもたらした被害は二五〇億ドルと推定され、ハリケーンを含む過去の災害で最大の一つに数えられている。ハリケーンによりメキシコ湾岸の油田施設やアメリカのミシシッピ州およびルイジアナ州の輸入施設が打撃を受け、操業停止となった。被害状況ならびに再開のメドは不明となっている。
このニュースが伝わったことで、二十九日のニューヨーク原油取引所は先行き不安と動揺が交錯し、十月以降の原油先物はバレル当り七〇ドルを超え、取引史上未曾有の高値をつけた。直物も前日比一・六五%高のバレル当り六七・二〇ドルで取引された。
これを受けて石油公社(ペトロブラス)のガブリエリ総裁は二十九日、サンパウロ市で開かれたサンパウロ州工業連盟の定例会議で先行き五年間のプランを説明した後、出席者の質問攻めに答えて、「現在の原油の国際相場をそのままブラジル国内のガソリンやディーゼル価格に反映させる意思はない」と言明した。
同総裁は昨今の原油高騰は多分に投機的思惑がからんでおり、さらに今回はハリケーンという天災が重なったものだとし、本来の需給バランスに沿った価格ではないとの見方を示し、安定価格を見据えた上でペトロブラス独自の燃料価格を設定するとの立場を強調した。
また燃料価格の引き上げは簡単で一朝のうちに完遂できるが、逆に引き下げは統制がとれないとし、二〇〇三年に石油価格が下落したにもかかわらずガソリンやディーゼルの燃料価格が消費者価格に浸透しなかった事実を挙げた。
いっぽうで通貨政策委員会(COPOM)が先週公表した議事録の中で、年内にガソリン価格の引き上げはないと予測を述べたのに対し「価格決定はペトロブラスの権限でCOPOMにとやかく言われる筋合いはない」と語気を荒げて猛反発した。COPOMは以前にもインフレ上昇の元凶はペトロブラスの燃料価格引き上げだと非難したことがあり、これに対しペトロブラスは公開質問状を送りつけて紛糾した経緯。
カトリーナはメキシコ湾岸を直撃し、油田施設を破壊した。これにより一日当り六〇万バレルの生産が停止されている。またミシシッピ州とルジアナ州の港湾と備蓄施設も打撃をこうむったため、一〇〇万バレルの輸入原油の陸揚げが停止されている。関係者はこれらの施設の復旧が長びけば、ブッシュ大統領の裁決で備蓄原油を市場に放出するだろうとみている。昨年九月のイヴァンの被害で同大統領は四五〇〇万バレルを放出した。