2005年8月26日(金)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十一日】「子供らに金品の施しを与える代わりに、将来を与えよう」とのスローガンの下、セーラサンパウロ市長は信号や街角でたむろする子供らを一掃する方針を打ち出した。信号待ちで停車する運転手や同乗者相手に物売りや窓ガラスの清掃、物乞いなど街角を生活の場とする子供らは年々増加し、現在全国で二七〇万人、サンパウロ市内では三千人と見られ社会問題となっている。これまで歴代の州知事や市長が対策を手掛けたが、いずれも挫折している。セーラ市長は所得税から一定率で控除できる寄付金を募り、更生基金として活用するキャンペーンに着手することで、懸案の問題に再挑戦することになった。
サンパウロ市当局の最新の調査によると、市内百八十カ所の街角にたむろしている子供らの数は三千人に上り、物売りなどの「商売」のほか、単に物乞いで一日を過ごす。これに対し車で通過する運転手や同乗者の三〇%は金品を施す博愛主義者だという。
このため、稼ぎの多い子供は一日平均三〇レアルから四〇レアルの身入りになる。この種の「稼ぎ」は全体で年間四〇〇〇万レアルに上ると見られ、一大産業の部類に入る。このため「退職者」はまれで、逆に参入者が年々増加する傾向にある。
子供らはほとんどが母子家庭で、父親は貧困が原因で犯罪に走り、逃亡や刑務所暮し果ては殺害された。母親は子沢山で定職がなく、パート職にありつければ良いほうの状態で、いきおい、これら子供らに生活費の負担が掛かる。調査では子供らの八五%が家族と生活し、一〇%が路上生活、五%が仲間と雑居生活しているという。このうち六一%は男児で、三九%が女児となっている。
セーラサンパウロ市長は、これらが非行の巣となり犯罪組織の予備軍になっていることを認識し、一掃して社会の一員として加わるべきとの観点から、NGO(非政府団体)と協力して具体案を練ることになった。一案として更生や教育施設を拡張、基金を設けて民間からの寄付をあおぎ、運営費に充てる。これで子供らと家族の生活費を賄うもので、寄付者は個人、企業を問わず、所得税から控除しようというもの。
サンパウロ州では過去に、時のコーヴァス知事が一九九六年に商品引換券を発行、金品の施しの代わりに券を与え、それを貧困救済所で食物や保健衛生品と引き換える条例を実施した。当時三〇〇万枚の券が発行され、ガソリンスタンド、スーパー、新聞売店などで釣銭の代わりに券を求めて、子供らに与えるよう奨励した。しかし券を悪用したりするなど効果が上らず、路上の子供らはそれまでの八七〇六人から一万三九四人に膨れ上る始末で、この案は廃止された。また、マルタ前市長は鳴物入りで統一教育センター(CEU)を設立、貧困子弟に教育とレジャーの場を提供すると意気込んだが、結局維持費と人件費が捻出できず宙に浮いてしまった。
他都市では成功例がある。パラナ州クリチーバ市では、今回のサンパウロ市の計画を先取り実施し、従来の子供らを三百人から百四十人へと半減させている。リオ・グランデ・ド・スル州のポルト・アレグレ市では民間からの寄付が年間八〇〇〇万レアル集まり、社会福祉が充実している。サンパウロ市では今年一月から八月までわずか八〇〇万レアルしか集まっていない、市当局ではキャンペーンを通じて今年二億レアルとしたいと意気込んでいる・絵に描いたモチで終わらなければ良いが…。