2005年8月26日(金)
凧(タコ)の技術者、山里ケンさん(66、モジ生まれサンパウロ在住)が、このほど「凧のすべて」を書いた『エンジェニエイロ・デ・ピパス――オ・インヴァゾール・ドス・アレス』をクルトゥーラ書店から出版、その記念会が九月三日、同出版社で行われる。山里さんは凧を「教育と文化」だ、と言い切る。現代の殺伐とした、人間性を見出しにくい社会において、凧に係わることこそ、人間回帰になる、というのである。
山里さんの凧研究は、一九五四年から五十一年になる。凧一筋の半生だ。専門はFEIを卒業して「機械」「労働防災技術」。研究から製作、飛行実験など自費でまかなう関係上、これまで費用捻出のため自家乗用車二台を売ったという。製作する凧の絵柄は、いまでも妻のエレナ・テルミさんが描く。最高の理解者なのである。
話を始めると止まらない。「凧は、二千三百年ほど前、中国で初めてつくられた。戦争に使用されて進歩した。天候の測候にも役立てられた。インターネットの理論も凧が根っこにあると思う。凧にアンテナがつけられたのだ。避雷針や飛行機の進歩にも貢献している」。
青年時代には、バロンやロケットの打ち上げにはまり込み、上空の雹(ひょう)を雨に変える研究をした。営農していた父親が雹害に苦労していたためだ。
競技では、現在もなお、輝かしい実績を誇る。サンパウロ州「凧揚げ」選手権では、カテゴリー「技術の部」で過去八回も優勝している。ギネスブック・ブラジル編には「電車状にもっとも数多くつながれて揚げられた数として二百四十二」が記録されている。また、面積の大きい凧では、山里さんの記録は四百八十一平方メートル。今後、世界記録六百八十平方メートル(ニュージーランドの技術者が保持)の更新を目指して努力するという。大凧の材料は、紙や竹でなく、ナイロン布、プラスチックである。サッコ・デ・リッショを活用している。
今回出版の本は、八二年から書き始められた。九一年内容を一部改定、ボネコ(略式本)が作られている。国内のすべての図書館に所蔵されて、人々に夢を与えられればいい、と望む。さらに、英語版、日本語版を出すのが夢。
『エンジェニェイロ・デ・ピパス』の内容あらましは――◇第一章 凧の起源、凧の科学、人類の飛行への夢、凧工学、スポーツ・娯楽としての凧、凧と環境教育、宣伝媒体としての凧。
◇第二章 どうして凧は揚がるのか、風とスピード、凧のタイプ、凧プロジェクトのための技術データ、安全に凧遊びするために。◇第三章 凧材料、製作準備、さぁ作ろう!。
山里さんの凧は「多彩」で「意外性」に満ちている。少しでも興味のある人は、この本に引き込まれること請け合いだ。
出版記念会は、九月三日クルトゥーラ書店講堂(ナッソエンス・ウニードス通り4777番)で、午後三時~四時、山里さんの講演、デモンストラソン、四時~五時半サイン会、販売。販売価格四十レアル。記念会後、各書店での価格も同額。問い合わせ電話5687・3901(やまざと)、3024・3599(出版社)。