健康広場
2005年8月24日(水)
都会に住んで生活にこだわりをもっている男性を指して、メトロ・セクシャルという。最近、気になるキーワードだ。英国で生まれた言葉で、メトロ(都会)とヘテロ・セクシャル(異性愛者)を結びつけたものだという。
フィットネスクラブで肉体に磨きをかけると同時に、エステサロンにも通って化粧やマニュキュアもし女性的な美しさも持ち合わせる。権化はレアル・マドリードのベッカム。ユアン・アクレガーやブラッド・ピットも仲間に入る。
この言葉を最初に聞いた時、ブラジルには流行らないと思った。ここは、マシストの国だからだ。カトリックでゲイは許されず、男性が女らしく振舞うことは忌避される。
しかしゲイのパレードには百万人以上が集まり、市民権を得ていっているようにみえるが……。メトロ・セクシャルはブラジルに上陸し若者に広がっている。ただ、人知れず努力を重ねる部分も少なくないようだ。
世の中の動きは早いもの。次の流行をにらみ、「イイベル・セクシャル」という言葉も言われ始めている。
この流行と因果関係があるためなのだろうか。援協総合診療所で禿げの予防・治療が人気上昇中だ。援協総合診療所の長瀬イルカ皮膚科医は「多くは中年以降の人だけど、二十代・三十代の患者が少なくない。最近は皆、見かけを気にするんですよ」と目を見張る。
遺伝的に髪の毛が薄くなるのは、男性ホルモンの仕業だというのが定説だ。男性ホルモンのテストステロンが頭皮に作用し始めると、別の成分に変質。毛根をだんだん小さくさせていく。それに連れて毛が細くなり、毛根が消失すると毛がもう生えてこない。
医薬品によって、テストステロンの変質を防ぐことが可能。飲み薬と塗り薬が開発されており、両者とも機能が衰えつつある毛根をもとに戻す働きがある。効き目は、前者のほうが大きい。
男性ホルモンの動きを制御し始めるまでに二カ月、目に見えた結果が現れるのは一年後なので、忍耐が要求される。ただ毛根が失われていたら、もう手遅れ。増毛を望むなら、皮膚を移植させるしか道は残されていない。
長瀬医師は「植毛が必要な患者を除き、だいたい薬で髪が生えてくるようになります」と悩める男性を励(はげ)ます。二十五歳くらいから体質が変わってくるので、肌の曲がり角に合わせて予防・治療をスタートさせるのが最も効果的だそうだ。
増毛薬は長期間の服用を迫られるので、副作用が気にかかるところ。インポテンスになるのではという不安の声も聞かれる。数千人を集めた臨床試験で、肝臓に影響が出たのが数人だけ。九五%は問題ないという。
「肝臓を傷めた人にはあまり勧めないし、インポテンスについても因果関係があるか、証明されていません。もちろん、事前に説明はしますけど」(長瀬医師)。医薬品の服用患者には、年に一度のチェック・アップを受けて健康状態を把握するよう勧めているという。
髪の毛が抜けると言えば、円形脱毛症もそうだ。こちらははっきりした原因が分かっておらず、ストレスという説が有力だ。患者によって、治療方法は異なる。ただ、毛根は喪失しておらず、病気の元が除かれれば毛が元通り生えてくるわけだ。