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コラム 樹海

 「どぶろく」の漢字は濁酒であり「にごり酒」とも呼ぶ。筆者の感覚では「どぶろく」に軍配をあげるが、古い移民らもよくつくったものらしい。幾別春に「どびろくに喧嘩もなくて移民宿」があるし、酒が不足しがちな戦前にも上戸らはせっせと醸造に励んだと古老から耳にしたことがる。「あれは美味」「山海の珍味」と続く。貧しいコロノ暮らしで佳肴はないが、あの舌を痺れさす味は捨て難いとも▼幾別春は宮坂国人氏の俳号であり、濁酒は秋の季語でよく詠まれる。「味噌可なり菜漬妙なり濁り酒」は四方太の句だが、あの白く濁り深い味を秘めた「どぶろく」には鮪のトロよりも、沢庵や茄子漬がよく合って舌に乗る。スザノの近郊に漬物屋の高木政孝さんという濁酒造りの名手がいて編集部を挙げて何回もお世話になった。もう故人となられたが、「酒母が命」などと呟きながら漬物を肴に兎に角うまい「どぶろく」を造る▼近頃は日本から輸入した「にごり酒」をたまに呑むのだが、どうも本来の味と違うような気がする。美味ではあるけれども、風味と云うか「土の味」が消えてしまい都の味がする。泥臭さは「どぶろく」の命なのにスマ―トになりすぎたの印象が強い。先日、寺林由雄さんという読者が「どぶろく」について投稿していたが,雑穀で濁酒を造るのは初めて知った▼口がひん曲がる程に辛いそうだが、コクがあると云うからいい酒を想像する。きっと田舎の風情が豊かな「どぶろく」に違いなく天味無限に酔い痴れたいな―。   (遯)

 05/08/20