2005年8月17日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】ルーラ大統領はブラジリアのプラナルト宮で十五日、政局スキャンダルに関連し、これ以上大統領としての立場から見解や釈明は行わないとの態度を明らかにした。十二日の政見発表で立場を説明し「悪人は断罪すべし」と言明したことで一応のケリがついたとの判断に基づいたもの。
大統領は同日の主要閣僚との閣議で、これまでのスキャンダルの経緯を振り返った上で、連警や議会調査委員会(CPI)の捜査が進展していることで、政府への波及は下火になったとの見方を示した。これにより大統領自身への責任問題も「程遠いもの」になったとし、前回の政見発表に次いで近日中に再度所信を発表する予定にしていたが、もはやその必要はないとの決断に至った。
同閣議では、為替業者が労働者党(PT)の資金を外国に不正送金した全貌をCPIに証言するとの噂があることが話題に上ったが、大統領はこれに対し、意に介することなく業務遂行に全力を尽すよう指示した。とくに、政局混乱のドサクサに紛れて(政府筋談)上院が可決した最賃の三八四レアルへの引き上げ案を下院で否決するために万全を期すよう激を飛ばした。また一部で大統領が全国の行事に参加し過ぎで業務に身が入っていないとの批判に対しては、国民の声を直接聞くことが肝要だとし、引き続き各地を飛び回ると大統領本来の強気発言も飛び出した。
いっぽうで野党五党の幹部と、連立与党ブラジル民主運動党(PMDB)の一部反主流派で反政府色を打ち出している議員らは会談を行い、当面大統領のインピーチメントは追及しないと申し合せた。今回の汚職やPTの不正資金にからむスキャンダルでは、大統領の責任の所存が確証されていないとの見方で合意に達したもので、「インピーチメントは国民から弾劾の声が上がって動くべきもの」で、政党が先んじるのはいたずらに政争で国を混乱に陥れるものだとの結論に達した。今後は各政党代表による政局分析委員会を設けて議論し、野党として足並を揃えることとなった。
こうした中、国会の異端児とも呼ばれるカヴァルカンチ下院議長は、一連の問題で大統領はシロだと思うとした上で、しかしインピーチメントになった場合は、大統領に就任する用意はできていると発言し物議をかもした。同議長はスキャンダルに連座するアレンカール副大統領も同時に辞任するため、三権の長である同議長に大統領のお鉢が回ってくるというもの。これに対して、ロウセフ官房長官は無責任な発言だとして猛反発し、同議長を非難する声明を発表した。