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統領弾劾めぐり賛否両論=辞職よりウミを絞り出せ=政府懐刀3人、野党懐柔へ

2005年8月16日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙日十三―十五日】政局危機の矢面に立たされているルーラ大統領が十二日、テレビ政見放送で「政府と労働者党(PT)は国民に謝罪すべきだ」と発言したことが、与野党をはじめ内外で大きな反響を呼んでいる。また同時に「私は裏切られた。悪事はかつての同僚や側近の仕業」と強調、いわゆる蚊張の外にいたことを改めて訴えたことで野党は反発している。
 野党の強硬派の間ではあくまでも大統領の責任を追及してインピーチメント(弾劾による罷免)に持ち込むべきとの意見があるが、アウキミンサンパウロ州知事を始めとする穏健派は、証拠不十分で時期早尚との見方を示し、さらに大統領辞任で捜査がうやむやに終わるより、不正のウミを徹底的にしぼり出すべきだと主張している。
 この背景には先週発表されたダッタフォーリャの世論調査で、来年度の大統領選挙の決選投票で、セーラサンパウロ市長(ブラジル社会民主党=PSDB)が続投を狙うルーラ大統領を制するという、これまでの大統領絶対有利の調査結果に対して「大逆転」したことがある。PSDBとしてはスキャンダルの調査で次々と新事実が明るみに出されることで、大統領支持が低下し、大統領選挙を有利に展開できるとの読みが伺える。
 いっぽうでブラジル全国司教会議(CNBB)はテレビ放送に対し、「謝罪だけでは済まされない。政府は確固たる対策と指針を示すべきだ」との声明文を発表、国内での悪事が壊滅するよう神に祈るとつけ加えた。政教分離の姿勢に反してカトリック教会筋が政局の介入するのは異例のことで、注目されている。
 ルーラ大統領は、悪人を断罪すべきだとの方向性を示し、灰色とみられるジルセウ前官房長官をはじめ、PT前首脳部や政府要人を切って棄てる決意を示した。ジェンロPT党首との会談での進言を受入れたもので、これによりPTとも距離を置くことになる。
 革新系のジェンロ党首によると、これまで大統領の威を借りて党を意のままに操り、権力を伸ばしてきた主流派の一部を排除してと党を「新生」しなければ、大統領と党は共倒れになるとしている。さらにこの会談で、ジルセウ前官房長官が議員権はく奪を国会で審議される以前に、自ら議員辞職するべきとの点で合意したという。
 これに対し同前長官はこれまでの主張通り「ゲリラの戦士」としてあくまで戦い抜くことを再確認した。その上で、かつての盟友の同党首の意図を「ハラキリ(切腹)」だと決めつけた。しかしこれまでの知らぬ存ぜぬの態度から「知っていた部分もある」とトーンを下げたことが注目されている。
 いっぽうでコスタ・ネットPL党首が二〇〇二年の大統領選挙でPTの裏帳簿から六五〇万レアルを受け取ったことを明らかにし、ルーラ大統領およびアレンカール副大統領も承知していたと証言したことに野党は色めきたち、PTの解党も視野に入れて追及すると意気込んでいる。
 これに対し閣僚はインピーチメントを回避するため、野党との談合を進めることにした。バストス法相、パロッシ財務相、ヴァギネル法令担当相のいわゆる政府の懐刀三人で野党の懐柔を図ることになったが、一部野党側の強硬な態度から、今後もインピーチメントは尾を引くとみられている。インピーチメントは一九九二年にコーロル大統領が弾劾された時以外、これまで例がなく、ブラジル語にも適切な言葉がなかったことで、英語がそのまま適用され、公用語となった由来がある。