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トンネル使い中銀金庫破る=被害額1億5千万レアル=3カ月前から周到な用意の末

2005年8月10日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】セアラ州フォルタレーザ市の中央銀行支店で八日、国内犯罪史上で未曾有の一億五〇〇〇万レアル(六五〇〇万ドル相当)が盗み出された。銀行からの盗難では一九八七年にイギリスで発生した七二〇〇万ドル(当時の四〇〇〇万ポンド)に次ぐ世界第二位の規模となった。宝石や貴金属類の盗難を含むと世界四番目を記録した。犯人の一味らは逃亡中だが警察はこのうち八人の身許を割り出して指名手配するとともに、モンタージュ写真を公開する。
 盗み出された紙幣はいずれも五〇レアル、市中銀行から回収された使用済のもので、損傷の度合いを調べた上で流通に回すために保管されていたもので、五つのコンテナーで総重量は三・五トンに及んだ。金庫は五日午後六時に閉鎖されたままで、八日朝出勤した行員が金庫室を開けて床に直径七〇センチの穴が開けられているのを発見、犯行を知った。
 警察の調べによると、金庫室に通じる七十八メートルに及ぶ地下トンネルが掘られており、マネエル大通りを隔てた一本向うのヴィンテ・シンコ・デ・マルソ通りの一軒家の地下に通じていた。トンネルの深さは四メートル、高さは七〇センチで、ひざまずいてしか歩行できない。しかしトンネル内は電灯がつけられ換気扇もあった。
 一軒家は三カ月前から借りられ、常時十人位が出入りし、屋内のペンキ塗りなどをしていたという。警察ではこれらの作業はトンネル堀りと土を運び出すためのカモフラージュとみている。付近の住民はこれらの人物がしばしバールにコーヒーを飲みにきていたことから顔立ちを覚えていた。警察では目撃者の証言から八人の身許を割り出して指名手配した。
 いっぽうで金庫室にセンサーと防犯カメラが設置されていたにもかかわらず電源が切られて作動しなかったことから、警察では銀行内部あるいは業務を委託されて内部事情に詳しい第三者の共犯者がいるとみて捜査している。またトンネルも無駄なく正確に掘られ、金庫室の中央にたどりついていることから精巧な見取図をもとに測量器を使用したと見ている。さらに金庫室の床は一・一メートルのコンクリートと鉄鋼で強化されていたが難なく突き破られていることも周到な用意を物語っている。
 サンパウロ州保安局によると、昨年サンパウロ市で発生した、現金輸送会社を襲った二件の盗難事件と手口が類似していることから、同一犯のグループの可能性もあるとみている。昨年十月のトランスバンク盗難事件では四七〇万レアルが盗み出されたが、この時の手口も深さ三メートル長さ一一〇メートルのトンネルで、電灯や換気扇が完備されるなど今回の手口と全く似ている。もう一件昨年五月のロドバン事件では隣家から壁を突き破って侵入しており、今回の床穴破りと同じ手口となっている。同局では警備機器の充実でサンパウロやリオでの犯罪が困難となり、地方に進出したものとみている。
 これまで過去十五年間の銀行盗難事件は九九年七月のサンパウロ市でのバネスパ銀行の二四〇〇万ドル(現在値に換算)、九〇年のバイーア州での中央銀行の一九〇〇万ドル、九一年のレシフェ市での中央銀行の八三〇万ドルなどが挙げられる。世界の犯罪史上では二〇〇三年のベルギーでのダイアモンド・センターの一億ドル、同年オランダのアムステルダム空港での九〇〇〇万ドル相当のダイア貨物盗難がある。イギリスとブラジルの今回の銀行盗難はこれに次ぐ。