2005年8月10日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】ブラジルは農業先進国となった現在、雄大かつ確固とした農業政策を採るよう、サンパウロ大学のサワヤ・ジャンク教授が提言した。例えば、労働者党(PT)が推し進める家族単位の零細農計画は時代遅れだという。アグリビジネスの組織化の時代に、政府は生活扶助金を支給して零細農を農業政策の目玉としている。政府の思考法には、時代を理解しない試行錯誤があるとけん制する。
アグリビジネスは、事業家と学術研究者の産学複合体だというのが同教授の持論である。言葉を変えるなら、バイオテクノロジーやゲノム工学に始まり最終製品までを含むインテグレーション(統合)組織なのだ。その底辺にあるのが、原料を生産する農業組合や大小農、零細農である。
政府懸案の家族単位零細農は、どんなに数が多く大集団で農産物の大部分を生産しても、アグリビジネスの底辺に属する一部分である。この考え方は一九五七年、米国で常識となった。
これら零細農が必需食品の大部分を生産するので「食糧の安全保障」という錦の御旗が生まれた。この御旗を振れば、生産者への補助金も関税障壁も通用するだろうというエゴが先進国間に定着した。
さらに世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドにも、先進国のエゴが波及した。食糧の安全保障は、超高率関税や一部食糧の聖域化、セーフガード方式の容認を条文化しようとする動きが先進国にあった。
ブラジルは過去四年間、先進国向けの農産物輸出が七〇%増えた。一方では、二〇五%という高率関税を課せられるに至った。これは農業分野に限り、先進国も後進国も同一ラインに並んだことを意味する。ブラジルは、農業政策でもっと自信を持つべきだ。
ブラジルは農産物では、三〇〇億ドルを輸出し、輸入は三二億ドルを輸入するに過ぎない。ブラジルの農業は変化した。とてつもない進歩を遂げたのだ。例えば乳製品は生産技術が劣る間、厚い保護貿易の加護を受けてきた。現在は生産技術の向上により乳製品の輸出国に急変し、諸外国へ市場開放を要求している。
現在は零細農といえども、自由貿易の脅威はなくなった。しかし、米州自由貿易圏(FTAA)も対EU/メルコスルも座礁している。農産物の関税は、WTOが五五%に設定した。ブラジルはそれを三五%、さらに一一%にまで下げる考えだ。輸入農産物の六五%についてブラジルは、南米市場ではゼロ関税か低率関税とする予定だ。
途上国連合のG20の中でブラジルは、農産物補助金制度や農産物保護貿易をめぐり激戦を交わした国である。ブラジルは農業先進国であり、農業に関しては揺るがない立場を確保した。零細農や農地改革の入植者に対し、甘やかした農業政策や補助制度を採る必要はなくなったと思われる。
零細農や入植者が、はたしてちっぽけな農業補助金を必要としているか。一二億ドルの輸入農産物のために苦境にあるか、質問してみたらよい。農産物輸入で怖がるより、三〇〇億ドル輸出の増加に情熱を賭けるほうが近道である。