2005年7月30日(土)
サッカーで日本一を目指す中・高校にとって、ベストのトレーニング環境を提供出来ます──。ポン・デ・アスーカル・スポーツクラブは、二〇〇八年にプロリーグへの参入を目指してサンパウロとリオで、選手を育成中だ。大宮アルディージャU14の選手、コーチら二十二人が八月十五日から二週間、同クラブでブラジル式のトレーニング方法を学ぶことになった。同クラブが海外チームを受け入れるのは初めて。アジア、中近東、アフリカの中・高校生チームを念頭に、サッカー研修を本格化させていきたい考え。大宮アルディージャが試金石になる。仲介した高橋祐幸さん(72、岩手県出身)=サンパウロ市=は「個人ではなく、チーム全体が組織的にトレーニングを積めるはず」と話している。
ポン・デ・アスーカルは、国内に五百五十店舗を所有。年間売上は、百五十億ドルに達する。エストラやコンプレ・ベンなども傘下に収め、カレフールやウォールマートに比肩するスーパーだ。
「何か社会貢献をしなければならない」。アビリオ・ディニズ社長のそんな思いから、サッカークラブが結成された。トレーニングセンターが昨年サンパウロに、今年リオに完成。両市にそれぞれU15、U17、U20のチームを持っている。
各チームに四十人の選手が所属。両市で二百四十人の選手を抱えていることになる。トレーニングセンターには、温水プールやアカデミアなどの設備が充実。各チームに監督やフィジカルトレーナー、ドクター、マッサージ師などを揃え、プロ並のクラブだ。
サンパウロのU20は今年六月、ナイキカップ(U20)で優勝。来年一月に、コッパ・サンパウロ・ジュニオールに初出場する予定。二十歳を過ぎても優秀な選手は既に、サントスやコリンチアンスに貸し出されているという。
高橋さんは大宮アルディージャの顧問。チームからの依頼を受けて、研修プログラムを作成し、ジョゼ・カルロス・ブルノーロ・サッカー担当重役に持ち込んだ。
同氏は、バレーボール・ブラジル代表の元監督。九〇年代半ばから後半にパウメイラスのサッカー担当取締役にあり、ポン・デ・アスーカルに経営手腕を買われた。サッカーに対する高橋さんの計画書に賛同した。トレーニングメニューは準備体操から親善試合まで、すべてブラジル式。日本のコーチらは全く、手を出さない。
高橋さんは「ここでは、トーナメントに入る約二週間前から、徐々に体を慣らしていくんです。二~三日はボールを触らせません。スタッフには、ブラジルの方法を見学してもらい、ブラジルが強い理由を探ってもらいたい」と意図を説明する。
滞在中には、ポン・デ・アスーカルを始め、パウメイラス、コリンチアンス、サンパウロのU14との親善試合のほか、ブラジル選手権の観戦などが計画されている。一人当たりの参加費は、二十万円~三十万円。従来の半額で済む。
高橋さんは、個人でTVバンデイランテスのカメラマンと契約。トレーニングの模様をビデオに撮影し、日本の高校などに無料で配布してPRを図る考えだ。「私も七十歳を超え、あと何年働けるか分かりません。社会への最後の奉公だと思ってがんばりたい」と張り切っている。