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鍬を針に変えて新しい人生=トップモデルの水着もおまかせ=サンパウロ州

2005年7月29日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】畑で鍬を持つ手を針に変えて、針子として新しい人生を歩んでいる男性らがいる。ガルジノさん(20)も、その一人だ。彼は農業労務者の家に生まれ、父親と兄とともに農場の日雇い労務者として生計をたててきた。日中の猛暑の中、牧草刈りや農産物の収穫に汗みどろの毎日だった。そんな折、転機が訪れた。市内の縫製工場の求人に応募し、採用されたのだ。
 以来、荒くれ立ったいかつい手で縫製する毎日となった。当初は「女のする仕事」と周囲や友人から冷やかされ嘲笑されたが、今やビキニ製造の専門家の一人となり、製品は二十カ国以上に輸出されている。
 中でも自慢は世界のトップモデルでブラジル出身のジセレ・ビンチェンが、彼の作ったビキニで世界一流のモード誌に登場し、それがニューヨークの最高ブランド店ビクトリア・シークレットの店頭に並んだことだ。工場の壁にはモード誌の切り抜きが所狭しと帖られている。冷やかした友人らも今や同じ工場でミシンを踏んでいる。
 所はアウリフラマ市。サンパウロ市から北西へ五七〇キロの人口一万三千人の田舎町だ。しかし十五年前に町おこしで始まった縫製工場で、ネグリジェや水着生産で全国一にのし上がった。市内には大、中、小八十二の裁縫工場があり、これに加えて裏部屋や車庫で製造する不法個人工場が八十カ所ある。
 市全体で一カ月当たり百六十万着のネグリジェと四十万着の水着類が製造され、その三〇%が輸出されるとともに、国内有名店のリアシュエロ、C&A、レンネル、ペルナンブカーナスにも納入されている。世界各国のアジダスの支店も顧客だ。
 現在、同市の針子は五千人だが、そのうち男性が三〇%を占めるに至った。二年前は一〇%弱だった。農務労働者としての安定労働市場、将来の不透明性、過重な労働の割に低い所得などが、工場従業員へと駆り立てた。
 一千百人の従業員を有する同市最大のファエルでは五百五十人の針子のうち百八十人が男性で今後増加気運にあるという。同社では、男性は女性と違い家事や育児にとらわれないため、欠勤や早退がなく効率的だとしている。
 また、インチムスでも四百人の従業員のうち三〇%は男性で、女性の仕事と比較し、曲線部分の縫製に難点があるが、ほかは遜色がないとして、今後も男性を採用する意向を示している。工場内でもこれまでは女性ばかりの職場で味気がなかったが、男性の参入により恋愛から結婚にゴールインするカップルが増え、お色気が混じった活気が漂うというオマケがついた。
 市当局も活況を見越して人材確保のため三年前に閉鎖した職業訓練所を再開、とくに縫製技術の指導に注力することにした。さらに本来なら取り締まるべきところの不法家内工場も、大手工場の下請けとして欠かせないと、自由操業を認める寛大措置を取ることを決めた。