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疑惑の大統領単独インタビュー=記者会見拒否し続けた挙句=疑惑の人物の証言内容先取り

7月20日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】ルーラ大統領が訪問先のパリで十五日に行ったフリージャーナリストとの単独インタビューが、内外の報道機関および国内関係者に波紋を投じている。このインタビューは同大統領が宿泊していたホテルで、フランス在住のフリージャーナリストが行ったもので、十七日のグローボ局のワイド番組ファンタスチコで全国に向け放送された。
 四十日前の郵便局汚職を皮切りに疑惑やスキャンダルが表面化し政治危機に陥って以来、内外の主だった報道機関はルーラ大統領に対し記者会見を申し込んでいたが、頑なに拒否されてきた。今回の訪仏でもフランスのル・モンド紙をはじめ各紙が会見を強く希望したにもかかわらず答えは「ノン」だった。ブラジルの記者団に対しては、「内政問題はブラジルに戻ってから話すのが常識」と語り、同席していたシラク大統領が思わず相づちを打つほどの筋の通しようだった。
 会見にこぎつけたフリージャーナリストは、番組を制作してテレビ局に持込む個人プロダクションの社員で、今回のインタビューも放映したのはグローボ局のみで、関係者によると、フランスのテレビ局は関心を示さず、いわば買ってもらえなかったという。多くの一流報道記者を尻目に、外務省などの厳しい検査をパスして正体不明の一介のフリージャーナリストがなぜ会見できたのか不可解な謎に包まれているのと同時に、一国の元首が取るべき態度ではないと非難が集中している。
 さらにインタビュー内容についても事実と符合しない点が指摘されている。労働者党(PT)の裏金工作について渦中の人物ヴァレリオ氏とデルービオ氏が同じグローボ局のインタビューで語ったが、ルーラ大統領の会見はそれ以前に収録されたものだった。にもかかわらず二人の供述を事前に知っていたかの如き発言をしている。
 例えば、選挙法の政治献金を隠れミノにして資金を悪用している可能性があるので、選挙法を改正すべきだとか、PT党は裏帳簿という歴代の古い悪慣習を依然として維持していると指摘した。この事実は前出の二人が初めて証言したもので、大統領就任以来PT内部に干渉しなかったという、大統領のこれまでの態度にしては内部事情に精通しているとみられている。極端な見方をすると、大統領は二人の証言を事前に知っていたと勘ぐる向きもある。また別な面からは自ら立ち上げたPTの党首時代に裏帳簿は存在しなかったのか(歴代の慣習に逆らって)との疑問も生じている。
 政界アナリストは、潔白で透明な開けっ広げの政治をスローガンとしてきた大統領にとって、今回の一連の動きは不信を招きかねないと警告。大統領就任以前は、政見発表や行動の前に報道陣に発表していたが、就任後三年間で共同記者会見をわずか一度しか行っていないのが様変わりだと指摘している。