「お金を何に使うか、悩みはないですか」。先月末、首相官邸を表敬訪問したビル・ゲイツ氏への小泉首相の質問だそうだ。ゲイツ氏は、世界一の富豪といわれる米マイクロソフト社の会長だ▼普通、大金持ちはこんな質問は発しないと思う。小泉さんは閣僚資産公開の際でもわかるように、そんなに資産家ではない。だから至って庶民的な?問いかけをしたのだ▼戦前の日本移民は「錦衣帰郷」を達成するためにブラジルに来た、とよくいわれる。規模の大小はあるが、「農」で儲けた人はいる。再投資もしただろうが、「『青柳』で札(さつ)をばらまいた」と〃武勇伝〃を語るのが、コロニアでは通り相場だった▼「工」「商」で、一応、一城一国の主になった人もいる。しかし、三代と続かない。血縁以外を経営者にして発展、儲けたという例もほとんど聞かない。財布は息子に渡し、小遣い銭にも不自由…といった哀れな話も出てくる▼大まじめにいえば、子女を立派に育て、今、老境を迎え、内外への旅行をお金の制約を受けずにできる、そういった辺りが、円満な移民のお金持ちかとも思う。三、四世の時代になったら、あるいは「悩みはないか」の問いも出るかもしれない。お金の使い方は難しいらしい。まずは、たくさん持ってみないとわからない▼さて、ゲイツ氏は小泉質問に「医療問題に取り組むと、いくらでもお金をかけられる。科学者を通じて提案をしている」と答えた。「かけられる」の意味はさまざま解釈できる。(神)
05/7/20