7月19日(火)
日本のアニメ専門家、石黒育(めぐむ)さんが十八日午後五時から講演した。 世界初公開の劇場作品『嘉兵衛の海』を上映後、約一時間に渡って現在の日本アニメの状況を語り、約七十人ほどが聞き入った。熱心な参加者からは質問が相次いだ。
ディズニーとの違いに関しては、「日本アニメとは対極にある」との説明。日本はその十分の一の予算で、時間もない中で制作しているという。
「日本では二十代のアニメーターが、育てた人を超えてすごく評価される。いわば下克上の世界です。欧米のスタジオにはそういうことが少ないと思います」。
さらに「テレビ放映前日までリテーク(修正)を出して、自分の作品に情熱を燃やしながら作っています」とも。「夢中で四十年近くやってきました。今日のように評価してもらえる時代になったのは夢のようなことです」。
ブラジルはじめ外国で若者たちがアニメに夢中になっているのはなぜか―との質問に、「日本では二十歳代の若者が自分の全てをアニメに賭けている。その熱気が画面に出るんでしょうね。ベテランのアニメーターがちょっと手を抜いて書くより、若い人が一生懸命書いたほうが画面に熱気が出る。シナリオも演出もそう。一カ月に四百本が制作されています。その中で、どうやって自分をアピールするか、どうしたら認められるかを考えていますから」と応えた。
今後のアニメの発展の方向性を問われ、「(『嘉兵衛の海』のように)悪人が一人も出てこなくて、日本文化を再確認、継承していけるものを作り続けたい」との抱負を語った。「ただし、それだとスポンサーが見つかりにくいから、商業的には難しいが」。
その他、会場からはコンピュータを使った3Dアニメや、アニメが好きであることとプロのアニメーターになることの違い、アニメーターになりたいが研修させてくれるスタジオはないか、などの質問やお願いが次々と寄せられた。
石黒さんは総作画監督として『一休さん』『ひみつのアッコちゃん』『ポケモン』や、スタジオジブリ作品も手がけている。