7月16日(土)
在ブラジル日本国大使館の二等書記官、近藤健氏によるセミナー「二〇〇六年選挙のポイント」が、ブラジル日本商工会議所の貿易部会(中村純一部会長)とコンサルタント部会(桜井悌司部会長)の共催で七日午後から行われた。約五十人近くが参加する盛況ぶりで、昨年十一月の第一回に引き続き、分かりやすい話し振りと豊富なエピソードで参加者は満足した様子だった。
「これは大使館の見解ではなく、私個人のもの」と近藤氏は最初に断りを入れた。メンサロンなどのスキャンダルにより政治情勢が非常に流動的になっており、予測は非常に難しいとしながらも、来年の大統領選挙に向けた政局を分析した。「ほぼ全体がオフレコです」という密度の高い内容が語られ、通常以上の会員が集まった。
与党PTと野党の中心PSDBの間に位置するPMDBは、昨年来、徐々にPTよりに位置を占めつつあり、今後も同党の動向が政局を大きく左右するという。労働組合を母体とするPTは工場の立地する都市型政党であり、それ故、全伯的な支部組織が弱い。
その点、最も多くの市長を抱するPMDBは地方組織が充実しており、都市政党と相補的な関係が築ける可能性がある。ただし、地方のファゼンデイロも多いことから、志向性の違うPTとの連立に反対する勢力も根強い。特に有力知事らを中心とするグループの反PTの動きが、今後の焦点となってきそうだ。
六月十六日のダッタフォーリャの世論調査によれば、すでにスキャンダルが始まっていたが、ルーラ大統領への「良い」との評価は三六%、「普通」は四四%と高く、カルドーゾ大統領の就任三年目の「良い」三九%と余り変わらない。
現在ブラジリアの連邦議会は調査委員会(CPI)の関係で「軽い興奮状態になっていると聞きました」という。「今選挙をしたらルーラが勝つ、とは関係者の一致した評価です。再選の可能性は十分ある」としつつも、野党がどこまで、どのような方法で汚職の責任を追及するかに今後の展開が変わるという。
今後の政局のカギの握るのは「経済指標」「政策上の成果の有無」「PMDBの動向」「野党の結束」「PTに対する失望の広がりの程度」と締め括った。あっという間に一時間半が過ぎ、続いて熱心な質疑応答が行われた。開場では、来年の第三回への期待の声がさっそく聞かれた。
近藤氏は九五年外務省入省で、昨年四月からブラジリア大使館政務班勤務。