7月9日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】「死ぬかと思った。(神の)お迎えが来たんだなと」―。語るのはブラジル人男性のミシェルさん。七日にロンドン市内で発生した同時爆破テロ事件で、爆破された地下鉄車両に乗り合わせた。BBCブラジル放送がその生々しい体験談を報じた。
それによると、ミシェルさんは六年間勤めている金融機関に出動するため、フィンスバリー・パーク駅から乗車した。キングス・クロス駅を発車直後に地下鉄は停止し、車内の灯が消えた。と同時に真黒い煙が流れ込んできた。満員の車内では新聞や雑誌で煙をあおぎ始めたが、煙は量を増し車内に充満した。涙腺がやられ涙がひっきりなしに流れ、窒息死するかと思った。数人が窓ガラスを壊し始めたので、自分も肘や体当りで破った。身重の女性がいたので全員でまず彼女を出し、車外へと飛び降りた。
線路づたいに駅のプラットフォームに着いた時に生き返った気持ちになり、まだ(死ぬ)時期ではなかったと実感した。後で爆破された別の車両で二十一人が死亡したと聞き、体の震えが止まらなかったと述懐している。
今回のテロ事件にもかかわらず、ロンドン市内で勤務し、また休暇で訪れているブラジル人らは、帰国の意志はないとしている。ミシェルさんも、地下鉄の運行が再開されたら出勤すると語っている。彼らは異口同音に今回のテロで警戒がさらに強まるため、ひんぱんにテロは発生しないと述べ、逆にブラジルの方が毎日、強盗や殺人の危険にさらされていると強調する。
二十七歳の男性弁護士は、休暇が残り一週間あり、ロンドン市内観光が終わっていないので、毎朝ニュースを見てから出掛けるつもりだとしている。オクスフォード街の有名ブラジル・ファストフード店の二十八歳の男性従業員は、地下鉄が封鎖されたため徒歩で出勤する途中、商店のテレビで事故を知った。その時点で警官が通行人らの所持品を検査していたという。以前にも増して警備が強化されるとして喜んでいる。
修士課程取得のため滞英中の二十八歳の女子学生は、バス爆破現場から二区画離れたアパートに住んでいる。爆発音を聞き、落雷かと思って窓際に走ったが晴天だった。ケガ人が収容された病院で勤務するブラジル人看護婦はその数に仰天した。病院関係者によると開院以来の収容数だという。また金融会社に勤務する女性は出勤したが、事件により休業となり、様子を見るため午後まで事務所にとどまり、その後帰宅した。乗物は避けたため、徒歩で一時間かかった。
ブラジル人歌手のダニエラ・メルクリーは、七日に予定されていたショーが取り止めとなり、ロンドンに滞在するブラジル人ファンをガッカリさせた。ショーは今月末に延期となった。