年金受給で詐欺と中間搾取=被害者、約半数に上る=職員など騙り委任状に署名強制
6月24日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】サンパウロ市内の高齢者年金受給者の約半数が詐欺や中間搾取の被害にあっている。高齢者年金制度は九三年に始まり、福祉年金が最低賃金に満たない高齢者に月々三百レアル(最賃一カ月分)を支払うもの。連邦政府の出費だが、サンパウロ市が業務を代行し支払いは社会保障院(INSS)が行う。対象者は三万人に上り、毎月三千万レアルの出費となっている。市では三年毎に実態を調査し、見直しを行っている。しかし架空の住所や移転などで今回の調査では、七〇%の受給者しか突き止めることができなかった。
南部地区で一万一千人を調査したところ、四六・三%が違法や不正にからんでいることが判明した。本人が死亡しているにもかかわらず家族が引続き受け取っているのも多いが、受給者であることを知らなかったのが多く見られた。
調査によると、INSS職員とか監督官、あるいは弁護士と名乗る人物が現われ、年金の資格があるとして身分証明書の書類一式と委任状に署名させてドロンする。年金受け取りは現在、銀行窓口で本人であることを証明する必要がなく、INSSから送られてくるカードを使い現金自動預け払い機で引き出せる。このため詐欺団は本人の知らないままに月々の年金を着服できる。
詐欺とはならないまでも、法外な手数料を取る手続代行業者も横行している。手続開始の時点での手付金に加え、支給額の五カ月分を支給日に徴収する業者もある。良心的なところでも二カ月分は徴収する。代行業者によると、INSSに夜通し並んで手続きをすることもあり、不当な手数料ではないと説明している。
貧困層が最も多いジャルジン・アンジェラ区の老人ホームの住人は全員が代行業者に手続きを託し、二―三カ月分の報酬を払った。そのうちの一人は、三日間INSSの行列に並び、あげくの果ては書類不備で突き返されたという。それを考えると少々手数料が高くても業者に任すのが得策だとしている。
関係当局は、INSSに関係する犯罪は歴史的に根が深く、INSS待ち時間と官僚主義丸出しの応対が原因だと指摘している。これには出張所を増やし、地域に密着した業務が必要だと強調している。