6月24日(金)
「真知子さんのお母さんと同じ年齢ということで感激しました」。サントス厚生ホームを代表して三上治子さん(82)から歌手の渡辺真知子さんに花束が贈呈された。九十七年前、日本人移民はサントスに入港した。その地にある同ホームで、二十一日午後三時から、渡辺さんが慰問公演を行った。これは百周年記念イベント第一弾の一環で、二十日の晩餐会で行われた歌謡ショーに引き続いての公演となった。
「移民が初めて辿り着いた場所で歌えるなんて。尊い経験です。移民の方に敬意を表して歌います」と話す渡辺さん。観客は、ほぼ同ホームに入居している一世移民だ。『浜辺の歌』に始まり、『上を向いて歩こう』、美空ひばりの『りんご追分』を熱唱し、約六十人の観客も一緒に歌うなどして大いに盛り上がった。その他にはスペイン語での『ベサメ・ムーチョ』を披露した。
伴奏は矢崎愛さん。一週間前に急きょ決まった。「実は真知子さんとは今日の朝、初めて会ったんです」と話す。また、当初予定されていなかった『かもめが翔んだ日』を渡辺さんの希望により歌うことになった。「楽譜がなかったので真知子さんにピアノを弾いてもらって急いで覚えました」という愛さん。しかし、「真知子さんの歌がしっかりしてるから心配はなかった」と話す。渡辺さんも「愛ちゃんを日本に連れて帰りたい」というほどの気に入りぶり。本番でも息の合った様子が窺えた。
アンコールでは『浜辺の歌』を観客とともに合唱。涙を流しながら聴き入っていたブルーツリーホテル社長の青木智栄子さんは「皆さん何を思い出して歌ってるんでしょうね。ブラジルに来た頃か、日本のことか。わからないけど懐かしいんでしょうね」と声を詰まらせた。
青木実同ホーム経営委員長は「このような素晴らしい歌を披露してくれて感謝しないといけない。また、援護協会の人々のおかげでいい時間が過ごせました」と感謝の辞を述べた。最後は、菊池義治援協副会長の「万歳!ビーバ!」の掛け声とともに盛大な拍手が贈られた。
渡辺さんは「こんな経験は初めて。歌っていて私の中にある新しいものが出てきた。言葉にならないです」と感動を露にし、「これからもこのような時間を重ねていきたい」と話した。