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ブラジルは座り込むアヒル=輸出、投資で東アジア諸国と差

6月15日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】サンパウロ大学経済学部のマルコス・サワヤジャンク教授は、沖縄で開催された米州開発銀行のゼミに参加した。東アジアが空飛ぶ雁ならブラジルは座り込むアヒルと、同教授はゼミの感想を次のように述べた。
 経済成長率で見れば東アジアの一〇%近い成績に較べ、ブラジルはマイナス一%からプラス五%以下を低迷している。ブラジルが民主憲法を打ち立て、インフレを鎮圧し数々の行政改革に挑み、輸出も伸びていることは誰も否定しないが、ブラジルが東アジアの後塵を拝しているのも事実だ。
 両国を一九五〇年の出発点から考察するとブラジルは当時、国産化と工業化政策を打ち出した。東アジアは、食べるものも食べず輸出に精を出した。共通点は、どちらも国内産業の保護政策で同じだった。
 決定的違いは、ブラジルが国内を満たし残りを輸出したのに対し、東アジアは外国を優先し残りを国内へ回した。八〇年代のアジア諸国は日本から技術導入を行い、日本という親雁に従う子雁の群れだった。
 先進国日本に韓国、台湾、香港、シンガポールが続き、少し遅れてASEANが続いた。そこへ今度は超特大の野生雁、中国とインドが仲間入りをした。先発の国々が、人件費の安い後発の国々へ加工の仕事を回した。
 後発地域へ回した仕事の順序はまず繊維、続いて化学、鉄鋼、自動車、電子部品、IT技術分野だった。後発国の工業化サイクルは、周到に準備されたグローバル政策である。仕事を与え、利益は還元される緻密な計画だった。
 ゼミでは中国の経済成長がどこまで持続するかが焦点となった。一方でブラジルは、抜きつ抜かれつのインフレと低率成長、爆発寸前の公共債務、経費垂れ流しの政府、幼稚なザル漏り制度、朝令暮改のルールで経済成長の足を取られている体たらく。
 マイケル・モトマー氏が九三年に発表した「空飛ぶ雁を眺める鈍重なアヒル」は、ブラジルを揶揄したようだ。東アジアは八〇年、工業生産がGDPの四〇%、ブラジルは農工業合わせて三三%だった。
 ブラジルの弱点は、投資とGDPの関係。東アジアはGDPの三五%を再投資するのに、ブラジルは二〇%。東アジアの設備投資は国内の貯蓄が助け、外資に頼るところが少ない。
 東アジアでは二国間協定の歴史は浅いが、古いエサを上手に活用している。日本は良いとこ取りの本家だし、中国の反日デモも日中間協定を逆手に取った代表的例ではないか。東アジアの知恵は心憎いばかりだ。