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ブラジル製三味線=海藤さんが初めて=普及に弾みつくか

6月10日(金)

 「日本製の安い三味線よりいい音が出るんですよ」。海藤三味太鼓教室の海藤司さん(57)は、長年の研究の末、国内初めての「ブラジル製三味線」を完成させた。
 年々、ブラジルで三味線を演奏する人が減ってきている。「三味線を普及させたい」。海藤さんは青少年の太鼓、よさこいソーランなどの刺激を受けて、若い世代に三味線奏者を増やそうと努力してきた。
 しかし、三味線は全て日本からの輸入。その分値段が高いことが、ブラジルでの普及の支障になっていた。そこで海藤さんはブラジルの材料を使用して廉価な「ブラジル製三味線」を作製することを決意。「完成させれば、今まで手が届きにくかった三味線に手が届くようになり、普及に弾みがつくだろう」。約十年前から研究を進め、試行錯誤を繰り返し、四ヵ月前、完成した。
 「一番苦労したことは皮張り」と言うように、これでいかにいい音が出るかが決まるという。三味線は曲線が多い分、張るのに苦労したそうだ。民謡など繊細な音を奏でるには猫皮を使用するが、海藤さんの専門は津軽三味線。力強い音を出すために犬皮を日本から輸入している。
 「皮張りの技術、実は息子から教えてもらったんです、息子のおかげだ」と照れ笑いを浮かべる海藤さん。十四歳から三味線を始めたという長男の一平さん(23)は、二〇〇〇年からの約一年半、島根県出雲市へ出稼ぎに行った。その時に、同市にある「金山三弦店」の金山昌美さんに皮張りの技術を教えてもらい、帰伯後、それを海藤さんに伝授したそう。一平さんは「金山さんのおかげで三味線が完成した。ありがとうございます」と感謝の気持ちを表した。
 木材は硬いイタウーバを使用。やはり日本には劣るが、「ブラジルでは適材だ」と話す。現在はクリチーバの金型会社に依頼し、型を作ってもらっている。
 現在、海藤さんの生徒はブラジル中に三十人いる。リベルダーデはもちろん、クリチーバ、プレジデンテ・プルデンテなどへの出張授業を持つなど、普及に熱心だ。
 娘の紀予さん(20)は、十一歳から三味線を始めた。民謡は八歳から始め、去年行われた第十五回江差追分ブラジル大会に出場。見事優勝者に選ばれ、日本大会出場への切符を手に入れた。その後大阪で二ヵ月、三味線修行をした。
 また、次男の洋平(17)さんや従兄弟も三味線を演奏するなどまさに三味線一家。「何か発表会があれば家族で参加する」。今回の完成をきっかけに、海藤さんはもちろん、家族でさらなる普及を目指す。
 なお、七月三日午前九時から、タウバテ日伯文化協会会館で、海藤三味太鼓教室発表会並びに、第一回三味線コンクールを開催される。