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社会保障の累積赤字解消を=GMなど老舗企業は他山の石

6月8日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙五月六日】ブラジルでも社会保障院や健康保険会社が経営難に陥っていることで、米自動車産業におけるGMとフォードの没落は対岸の火事とはいえない。米格つけ会社のスタンダード&プーア社は、過重債務を理由に両社の株を紙くず扱いに引き下げた。
 一九五二年、当時の国防長官が「GMによいことは、米国にもよい」続いてGMのウイルソン社長が「米国によいことはGMにもよい」といった時代が懐かしい。自動車産業が一国の産業のバロメーターとされた時代だった。ブラジルにも自動車は花形産業として一世を風びした。
 GM株の格つけ引き下げで打撃を受けたのは、GM従業員、年金生活者四十三万人とその扶養家族が享受する保健プランだ。同保健プランは年間、五六億ドルを年金と医療のためにGMから支給された。
 それがスタンダード&プーアの格つけ引き下げで、GMの営業益とプラン支給額が拮抗した。同額を保健プランに支給すれば、GMは丸裸になる。保健プランはGM勤続三十年で得る汗の結晶なのだ。それが崩壊前夜にある。
 医療補助は年々、年金生活者の高齢化とともに増額した。平均寿命の伸びも経費増額で負担となった。GMは労働組合との保健プラン契約があり、契約遂行のため窒息寸前にある。
 格つけ会社は〇四年、債務の時価修正を行い六一〇億ドルとした。GMは保健プランを支払うために操業しているに過ぎないと、スタンダード&プーア社は発表した。〇三年の債務総額は五七〇億ドルだった。この割合で債務が増額するなら、〇六年にはGMに何が起きるか。
 これは米国GMとフォードだけの問題ではない。自動車産業の老舗が抱える問題である。また自動車に限らず金属部門の鉄製品工業、航空会社、食品工業、発電会社などの老舗に共通の問題ともいえる。
 老舗企業は活力が衰えている。衰えを補うために自動化やロボット導入、IT化、下請け方式、臨時雇用、正社員の削減、労組との再交渉に奔走する。
 企業は低賃金地域への工場移転や労組の手が及ばない地域への移転、アジア地域への移転、保健プランなど社会制度が負担にならない廉価な地域への移転を選択肢に入れている。ブラジルの企業はこれらの問題に対処できるか。
 GMとフォードで起きていることが、次はどの国で起きるか。ブラジルコストや社会保障院の累積赤字の問題が解決できなければ、低コストの国へ製造業は移転する。ブラジルは、政府や国会議員、労組幹部がもう少し頭が良くないと、GMの轍を踏むことになる。