6月7日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】国際復興開発銀行(IBRD)は四日、ブラジルの国内総生産(GDP)の三九・八%をアングラ経済が占めると発表した。ブラジル企業の三社に一社、労働者の六〇%はアングラ経済に属するという。GDPの三六・八%は、脱税のもとに生産されるとした。コスト削減のため、正規企業が裏庭の軒下で稼働するアングラ企業へ委託生産させる下請けが通弊化。だがベルゾイーニ労相は、アングラ経済は政府と無関係だと無責任発言をはばからない。
IBRD(別名、世界銀行)発表は、ブラジルにとって衝撃であった。ブラジルは、私生児か隠し子的存在らしい。脱税を前提として成り立っている企業と労働者が、GDPの三六・八%を占めるという。年間五カ月は、無秩序状態だといえそうだ。米国の場合、アングラ経済は八・八%。インドが二三・一%。アルゼンチンが二五・四%。中国は例外。
連邦令が八八年に制定されて以来、税法の関連条例は三百三十一万六千種の複雑多岐にわたり、経営者の生皮を剥いだ。過重な社会保障負担金から逃れるため、経営者は労働者の非正規採用と脱税で難を凌いできた。ブラジルの税制環境の中、一般企業が二本足で立つことは奇跡とされる。
脱税は反国家行為だが、社会的には認められている。商品の受け渡しと同時に、販売伝票の提示は法的義務となっている。しかし、ブラジル文化の一部分とは言い難い。
公金の横領や政府経費の垂れ流し、一部特権階級への特別年金でふくれ上がる社会保障基金の累積赤字を見たら、誰でも真面目に納税するのがバカらしくなるのはもっともだ。国民は、血税で非国民を肥やす義務があるのだろうか。
アングラ経済が拡大する陰には、常軌を逸する税法がある。大規模に組織化した積み荷強盗や偽造伝票、衛生規定や環境規定の無視、非正規雇用、不当な労働環境などは、その落とし子だ。アングラ経済侵食の反面で、正規企業は競争力を殺がれている。アングラ企業に市場を譲り、生産能率や設備拡張への投資を断念している。
ベルゾイーニ労働相は、アングラ経済を九〇年代の無為無策政治がもたらした結果だとした。現政権の責任ではないというのだ。政府はアングラ企業の正規化で、法整備を検討中と述べた。月商三万五〇〇〇レアル以下の新企業や従業員組合の経営企業へ、新労働契約法を適用する法令が、下院で目下審議中ということだ。
高金利政策がもたらす企業のアングラ化と非正規雇用の増加についても、政府は対策を検討する。金利の引き下げと同時に、小口金融拡大とアングラ市場脱出への支援計画もある。二〇〇五年中に零細企業法も制定し、手続きの簡略化を図る予定だ。
一方、国際労働機関(ILO)は過去二十年間、世界全体で生産能率が画期的に向上したことを踏まえつつ、労働時間の短縮、資本金当たりの収益率とアングラ経済との関係を討論する予定だ。労働者の余暇増加と技術高度化が進む一方で、時代に乗り遅れた企業についても議論が行われる。