6月4日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】国連の安保理改革に反対した中国は二日、ハイチ派兵にも反対の意向を表明し、ブラジルの外交路線にも立ちはだかることになった。国連平和維持部隊としてのハイチ派兵の駐留期間延長は容認できないとして、中国は延長阻止の考えを明らかにした。国連安保理は一日、最終決着が付くまでの軍事的配慮として、ハイチ駐留を六月二十四日までの暫定措置と決定した。ブラジル外務省によると、ブラジル軍は十二月まで駐留する予定だ。
中国のジャン臨時国連大使は二日、各国のハイチ平和維持部隊の駐留期間は六カ月と決めてあり、例外は認めないとした。国連の中国代表部は、駐留期間の延長にも拒否権を発動する方針と述べた。
国連のブラジル代表部は中国の反応を平和維持部隊の活動制限ではなく、ハイチと台湾間の協力関係が五六年以来緊密化していることで、両国間にくさびを打ち込むのが狙いだと見ている。中国と台湾は過去十年間、対カリブ諸国との関係緊密化で覇を競っていた。
ハイチのボニファセ・アレハンドレ大統領が七月の台湾訪問を発表し、中国は対ハイチ外交で態度を硬化した。国連は、加盟国間の外交戦の過熱化に歯止めを掛けることを検討している。カリブ海の弱小国家に圧力となる常任理事国の拒否権発動にも、国連は制限を設けるらしい。拒否権の乱発は国際平和の維持に逆行するので、中国が槍玉に上がりそうだ。
平和部隊の派遣には中国も二〇〇四年に無条件で賛成した。六月末にはハイチ駐留軍の駐留期間延長が決議されると外務省はみている。政府は一日、増援部隊を送り平和維持活動の期間延長に前向きで取り組んでいる。
ブラジルのハイチ駐留軍は九百五十人と二百八十人の増援部隊が合流し、千二百人が十二月に帰還予定となっている。外務省の報告では、ハイチ派兵の必要が生じたのは、米軍派兵の承認を議会で得るのに時間がかかることを理由に、米政府がブラジル政府へ軍事的貢献を要請したため。
ハイチに駐留するブラジル平和維持部隊のアウグスト・ペレイラ大将は二日、ハイチに経済と社会福祉面で現実的政策が行われないなら、軍隊の駐留だけで問題は解決されないと述べた。同大将はブラジル軍の他に、各国の駐留軍六千二百人の指揮も採っている。
ハイチには諸外国の平和維持部隊が六回にわたって派遣されたが、社会基盤と制度が整っていないため全て失敗に終わった。インフラ整備で何も行われないなら、ブラジル軍の駐留も水泡に帰すると同大将は訴えた。
ハイチでは、誘拐や拉致、放火がひんぱんに発生している。首都ポルトーフランスの住民二百五十万人は誘拐におびえ、根拠のないうわさでもパニック状態になる。誘拐拉致といった犯罪は、駐留部隊の活動にとって大きな妨げとなっている。
ブラジル政府は、中国大使の国連発言を外交問題として扱わない方針。中国政府に対しては、ブラジル大使を通じて政府の安保理改革構想を個別に伝える。たとえ拒否権を行使しても、ブラジルの考えは伝わるはずとみている。中国の拒否権発動は東アジア地域の戦略問題であり、ブラジルの常任理入りに支障はないという。