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中国が安保理改革に反対=日本の常任理入り懸念=ブラジルの立場、微妙に=日中間の温度差感じた大統領

6月3日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】中国政府は一日、ブラジルなど四カ国が提案した常任理事国を拡大する安保理改革案は危険だとする考えを表明した。中国のワン国連大使は、改革案が承認され理事国の選出に至るなら、中国の拒否権行使を示唆した。中国の判断は、歴史的に問題がある日本の安保理入りを懸念したものと思われる。米政府は日本の常任理入り支持を公約したが、米野党はブラジルまたはインドの常任理入りを支持した。
 ブラジル、日本、ドイツ、インドの四カ国が五月に国連総会で提案した安保理改革案は、危険だとする考えを中国国連大使が表明した。改革案に国連加盟の百九十一カ国の三分の二が賛成票を投じるなら、中国は拒否権を行使するとした。中国の見解では、安保理改革案は国連を二分し、国連の意義が無に帰するという。
 改革案を容認していた英仏両国は、中国のけん制で態度を保留した。中国は、他の常任理事国にとって改革案は対岸の火事であるが、中国にとっては重大関心事であるとした。
 六月の国連総会で改革案が表決され認められるなら、国連は時限爆弾を抱え崩壊することになると警告した。四カ国が提案した改革案が国連で承認されることがあっても、中国議会は批准しないと中国大使は述べた。
 中国政府の発言は、ルーラ大統領を微妙な立場へ追い込んだ。ブラジルにとって常任理事国の拡大とブラジルの常任理事国入りは、ルーラ地政学の世界地図変革と国際経済改革を実現するための、外交政策の最大目標だった。大統領は、きしみかけた改革案の修復に挑戦することになりそうだ。すでに根回しを済ませ、支持も取り付けた同盟国の予期せぬ意志表示に狼狽した。
 アモリン外相は二〇〇四年六月、経済開発協力機構(OECD)総会に参加し、ブラジルの発言力の弱いことを痛感した。ブラジルが国際社会への影響を強めるためには、安保理常任理事国入りが不可欠だと大統領に薦めた。しかし、地政学的状況の変更を望むブラジルと現状維持を求める中国で対峙した。
 ブラジル外務省は、中国が安保理改革に抵抗すれば、国連の中で孤立すると見ている。改革を支援する国は各大陸で圧倒的に多い。中国の拒否権は常任理事国内のみで、提案四カ国が根回しを行って入る国連総会の場では効力がない。中国大使の発言は相手のいない警告であって、ブラジルとは関係がないとしている。
 中国の懸念は東アジアの局地的問題であり、ブラジルの常任理入りとは無関係で、国連を巻き込んだ世界的問題ではないと、外務省はいう。日本と中国の間には、古い歴史上の問題と民族文化の差異があり、ブラジルが関与することではないし、理解不可能なことだと考察している。
 ルーラ大統領が〇四年、中国を訪問したとき日中間の微妙な温度差を感じたという。経済協力では利用し利用される仲であるが、民族意識では相容れない深い断層があるのを感じたと大統領は述懐した。日中両国が東アジアの火種にならないよう、よく話し合って欲しいと念願した。