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コラム 樹海

 世の中―何が起こるかわからない。あの欧州連合(EU)の指導者であるフランスの国民が欧州憲法に「ノン」を突き付けた。それも批准賛成派が45%であったのに反対は54%余と10ポイントの開きもある。シラク大統領は切歯扼腕しているだろうが、このままではEUの基本法が成立するかどうかも危なっかしい▼欧州憲法は来年十一月の発効を目指しているけれども、一カ国でも批准しなければ発効しない。そんな中でのフランスの反対は、非常に重い意味を持つ。勿論、シラク大統領は批准への意欲を強めており、これから各種の政治工作を展開するが、他の加盟国への影響は真に大きい。きのう一日にはオランダでも国民投票が実施された。けれども、反対派が多く欧州憲法を否認するとの観測が専らである。英国でも国民投票を行うが、こちらも反対派が根強い▼フランスでの反対は、国内の失業や内政への不満が重なったの見方もある。しかし、国家主権やフランス文化に対する誇りといった価値観の問題が表に出てしまったのではないか。恐らく、英国やオランダも同じような意識構造を抱いていると思われる。ここが国境の壁を乗り越えて新しい組織を形成することの難しさである▼EU加盟国25カ国のうち9カ国が欧州憲法を批准しているが仏英やオランダの動きもあり今後の予測は難しい。ドイツと共にフランスは戦後の半世紀以上も欧州統合の推進役だった。「頭では賛成、心では反対」なのだから再び国民投票をの声も上がっている。だが―、よほど腹を据えてかからないと「欧州連合国家」の夢も後退する恐れすらある。(遯)

05/6/2