5月24日(火)
【ボリビア・サンタクルス市発】その環境の悪さからかつて「犬も通わぬサンファン」と呼ばれたサンファン移住地が今年、入植五十周年を迎える。日ボ移住協定が締結される一年前の一九五五年七月に第一次の十四世帯、八十八人が夢と希望を抱いて入植。以来、広大な原生林や悪路と真正面から向かい合ってきた。半世紀の節目を祝う記念祭典は八月二十日にカルロス・メサ大統領ら日ボ両国関係者らを招いて盛大に実施。記念碑の建設など複数の記念事業も予定されている。
サンタクルス市から北西に約八十キロ離れた同移住地の面積は約二万七千ヘクタール。サトウキビの栽培と製糖工場の建設を目的に西川利通氏が送り出したことから嚆矢となった八十八人は通称「西川移民」の名で知られる。現在、一世から三世まで約七百五十人が同移住地で生活し、組合を中心とした農業開発は、同移住地を国内有数の農業地帯に変貌させた。
現在、記念祭典に向けサンファン日本ボリビア協会でつくる祭典推進委員会が準備に追われている。サンタクルス駐在事務所の中須洋治領事は、同委員会の顧問。昨年はサンファン移住地と並ぶ「移住地の雄」沖縄移住地の五十周年にも立ち会った中須領事は「入植で苦労された一世にとっての大きな節目で、新しい世代に引き継ぐ時代の変わり目となるでしょう」とその意義を語る。
国内でもその存在価値を高く評価されている、と中須領事が話すように沖縄移住地の祭典には大統領も出席。サンファン移住地でも祝いの言葉を述べる予定だ。また、長崎や福岡などの出身者が多い母県からも知事ら来賓を招く方針だという。
記念祭典の目玉となるのが現地に建設される幅十七メートル、高さ三メートルの鉄筋コンクリートの記念碑だ。移住協定締結当時のエステンソーロ大統領の肖像を入れた同碑には、移住地の今日を築き上げるのに貢献した全千六百八十四人の名を記す。また半世紀の喜怒哀楽を、五十周年記念誌としてまとめる予定だ。
かつて原生林が広がった同移住地も、開発が進み入植初期の姿が失われつつあることから、移住地北部にある七町歩の保存林を自然公園として保存し、「犬も通わぬ」と言われた時代を思い出させるようにしたいとの案も出されている。祭典推進委員会では「ボリビア、日本両国の様々な方への感謝と絆の大切さを示すだけでなく、移住地のさらなる発展の糧としたい」と祭典を意義付ける。
同移住地からの再移住者がいるブラジル。問い合わせや協力の申し出などはサンファン日ボ協会(591・3・934・7055)かEメール(sanjuan@abj-sanjuan.org.bo)へ。