5月19日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】農地占拠運動(MST)のメンバー一万二千人が十七日、ブラジリアの国会前広場で侵入を阻止しようとした警官隊と衝突し、五十人の負傷者が出た。軍警は騎馬隊、機動隊、特殊部隊のほか、ヘリコプターも出動させたため、広場はさながら戦場と化した。
ルーラ大統領は騒動が治まった夜、代表者らと三時間に及ぶ会談を行った。会談内容は明らかにされていないが、代表者らによると、大統領はMSTの抗議は「正当なものだ」と共鳴したという。会談の後、大統領はMSTのシンボルである赤い帽子をかぶり、上機嫌で写真に収まった。いっぽうで連邦検察庁は、MSTの長期行進に対し、ゴイアス州ゴイアニア市が公庫から資金援助をした疑いがあるとして捜査を始める意向を明らかにした。
ゴイアニア市を起点として出発したデモ行進隊一万二千人は、十六日間かけてブラジリアに到着した。国会前広場に集結直後から大統領府や国会侵入を図り、警官隊と小競り合いが続いた。そうした中で、群衆の中を通り抜けようとした一台の警官のジープが群集に取り囲まれ、警官らが暴行を受けた。警官の一人が鼻の骨を折るなどの重症を負った。
これを見て、五十メートル後方にいた騎馬隊が出動、警棒や刀を抜いて群衆を蹴散らした。デモ隊は石や棒切れ、旗の棒などで抵抗。多勢に無勢で不利と見た警官らは、機動隊や特殊部隊の応援を求めた。それらが到着し、空からヘリコプター部隊も加わったため、広場は大混乱となり、戦場と化した。
ルーラ大統領は執務室にいたが、騒動が静まったのを見届けて、代表者らとの会談に応じた。会談後、代表者は、農地改革が遅れているのは政府の責任だとした上で、「抗議はもっともだ」と大統領が語ったと述べた。
そのため早急に七億レアルの追加予算の承認を国会に図り、農地区割を行う農業協力改革院(INCRA)の職員を一千三百人増員すると約束したという。しかし大統領は会談内容にコメントしておらず、政府関係者は、大統領は何ら意思表示はしなかったと約束を否定している。ロゼット農地改革相は、農地改革は予定の八一%を消化しており、抗議の主旨が不解だと不満を表している。
連邦検察庁は今回のデモ行進で五百五十万レアルの経費がかかったが、これがゴイアス州、ブラジリア、ゴイアニア市の公庫から支払われた公金乱用の疑いがあるとみて、捜査を開始することを明らかにした。