5月18日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十七日】老化による認知症(これまでは痴呆症と呼ばれていた)、いわゆるボケ症状の原因となるアルツハイマー病の治療機関が少ないことで、保健省は対応に追われている。アルツハイマーの患者は全国で百二十万人いるとみられ、そのうち無料の公立診療機関で治療を受けている患者は、わずか二%にすぎない。
保健省は二〇〇二年、アルツハイマー病を国が撲滅すべき疾患の一つに指定し、精神科医やリハビリを含む専門医による無料介護の実現を宣言した。と同時に七十四カ所の専門病棟の新設計画も立ち上げた。しかし、このうち完成したのは二十六病棟で、しかも設備が十分でないものが多い。
また保健省では指定にともない、アルツハイマー治療機関に対して専門入院施設、家庭介護、常時往診、特別病理研究所の設置を義務づけたため、一般の病院ではこれら条件を満たせず、診療に応じていない。
サンパウロ市内で最も設備が整っている病院の一つ、サンパウロ連邦大学医学部でも医師不足から診療の限定を余儀なくされている。応診時間は月曜日の午前と午後、木曜日と金曜日の午前と計四回。これでも患者数は一カ月に六百人を超えるという。
これにより保健省が打ち出した七十四カ所の新設病院が完成しても、一日四十人の患者が殺到してくる計算となる。アルツハイマーは色々な要素が原因となっており、これを解明するには患者一人当り一時間以上の診察が必要で、多数の医師団が必要となり、事実上不可能だとしている。
アルツハイマーの原因は大きく三つに分けられる。脳細胞の老化、細胞の変化、環境の変化で、放置すると症状は進行していく。六十五歳までは〇・五%以下、七十歳では一%、七十五歳で二%と低率だが、八十五歳では一〇%と急増する。長寿社会となっている現在、さらに増加するのは必至とみられている。