5月18日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙四月二十九日】ルーラ大統領の「お尻発言」に続き、放言好きのカヴァウカンチ下院議長とアレンカール副大統領は一言いいたかったに違いない。
基本金利を独断的に決定する中銀通貨政策委員会(COPOM)に対抗し、下院内にも通貨委員会を設けるという。両人は金利を勝手に決めるCOPOMに、政治的あるいは社会的お目付け機関の設置を考えている。
昨年、同じようなことをサンパウロ州工業連盟(FIESP)のスカッフ会長も提案した。スカッフ案は、生産者の立場から生産的で現実性のある金利を設定するよう要請するというもの。
外国紙は、このタイプの問題をジャボチカバと呼ぶ。ブラジルだけにしかないという意味。同時にガキの会合のように不毛の議論が交わされるという意味も含まれる。以下、外国紙の論説を参考に金利を検証する。
外国紙は議論の前に、COPOMと政治家、事業家に対話を提言した。通貨の流通量に対する金利水準が、通貨政策には反映されていない。基本金利はプールの水量とは違う。通貨量が多いほど低金利になり、通貨量が少ないほど高金利になるというのだ。
金利水準は、紙幣の増刷量にリンクする。紙幣印刷機は人間の脳に相当する。印刷機のコントロールは政治家や事業家、労組代表らがCOPOMと納得いくまで協議し、後は任せるべきではないかと。
もう一つの問題は、金利に関する概念。市中の金融機関がクレジットカードから徴収する二一八・三%の金利や、銀行が特別小切手から徴収する一五八%の金利、商店のローン金利一〇二・八%は、中銀の基本金利(SELIC)とは関係がない。大統領や事業家が高金利を責めるのは中銀かクレジットカードか。
COPOMがSELICを一〇%引き上げたら、特別小切手に影響が及ぶのかどうか。ブラジルのガンは中銀の高金利ではない。末期症状でパンク寸前の公共債務を抱えているのにもかかわらず、垂れ流しの政府の歳出と野放しの銀行カルテル。
もう一つの苦言は、インフレ目標とCOPOMの達成努力。基本金利を上げてもインフレは治まらない。COPOMのインフレ対策は、断頭台で処刑された首なし人間の首を締めているようなもの。
COPOMは、法令が定めた通貨量と金利水準の調整を遂行するロボット。しかも目標インフレ率は、COPOMが決めたものではなく政府が設定したもの。COPOMが設定し達成できなければ、財政責任法に抵触するからだ。
ブラジルでは建前上、達成よりも目標が大切なのだ。達成できなくても、巨大な公共債務という抜け道がある。毎日のように満期になる公債を、半分決済して残り半分はSELICで繰り延べにしている。
問題は達成ではなく、達成できない目標設定にあることが分かる。もっと分かり易くいうなら、ブラジルの財政構造に問題があるといえそうだ。だから高金利でCOPOMを責めるのはお門違いではないか。