5月11日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙四月十四日】米財政は毎月、雪だるまのように増える赤字で記録更新の連続。財政赤字が引き起こすリスクに対して、米政府は無頓着のようだ。米政府の意図は一体どこにあるのか。米財政をヒビの入った堤防から湖水が漏れている状況とみなす論説をエスタード紙が発表した。
それがどんな結果をもたらすか米政府が知らないはずはない。堤防決壊がどの程度で済むか、ブラジル政府は判断に迷っている。米国を旅すると、これから何が起こるか一目瞭然だ。ブラジル的見方をするなら、ドル安は世界恐慌の引き金になりそうだ。
いまや米国債は、Cボンドが金融市場で紙クズ扱いをされた時代を再現するかのようだ。それなのに財政は赤字を垂れ流し、公共債務を管理しない。問題を先送りし続け、結局はどうするつもりか。現在の世界経済システムを一度崩壊させた後の、新グローバルシステムの構築を本気で考えているのだろうか。
米商務省は十一日、二月の輸入が六百十億ドルに達し、輸出を超過したと発表した。この調子で行けば二〇〇五年の貿易赤字は、七千百七十億ドルに届きそうだ。生産経済の赤字を金融経済で帳尻合わせする考えらしい。金融資産の流れを米国へ向けることに専念すればよいらしい。
国際投資家は米国発の恐慌に巻き込まれないように、米国債を他のドル資産に取り替えている。それが毎日三十億ドル、年間で五千五百億ドルに上り、財政赤字に拍車を掛けている。これは、世界中に投資した米国資産の八〇%に当たる。
米国の貿易赤字は、国内総生産(GDP)の五%に過ぎないという楽観的見方がある。ドルは世界の基軸通貨であり、また外貨準備高の基準通貨となったのだから、貿易赤字への懸念は全体が見えていない局部的見方とする視点もある。
米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン理事長は、米国が財政赤字を放置するなら、世界経済は薄氷の上で空回りするという。対外収支が赤字ならカントリーリスクが上がり、投資家は高率配当を求める。またせっかくの配当金を不利な為替変動が食いつぶす可能性が生じるとした。
米国の財政状況が改善されないなら、好調の世界経済は台無しになる。石油産油国が原油の決済をユーロ建てに変更しているのも不気味だ。基軸通貨交替の前兆ではないかと、ブラジル政府は不審視している。