5月10日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】南米アラブ首脳会議と経済使節団の交流を兼ねた投資勧誘展が九日、物々しい警戒態勢の中、ブラジリアで同時開催された。アラブ諸国は特に期待された六首脳が欠席する中、百九十人の経済使節団を派遣した。南米諸国から百八十八人、ブラジルから四百四十八人の経済界代表が出席。アラブ投資銀行幹部などが、原油高騰による余剰資金百億ドルの投資先と経済交流への資金投下を同会議で検討する。
ブラジリアでは自動小銃で武装した軍隊九千人が、大統領府と最高裁を警備した。主要幹線道路は通行止めにして鉄条網を張り巡らせ、空からヘリ数十機が常時偵察、戦車や装甲車が多数出動する警戒態勢を敷いた。警戒ぶりは、八四年に軍政から直接選挙を訴える国民デモが行われた厳戒体制以来だ。
幹線道路と周辺のバイパスも車両乗り入れ禁止となっているので、通勤の乗用車やタクシーで道路は十二日まで混乱する模様。空も高度三千メートル以下は、全ての機種の航空機が飛行禁止となった。戦闘機F5とF103全機は、アナポリス空軍基地で不審機追跡のため臨戦体制に就いた。
アラブ南米間の友好外交は、合計で八百二十六人の財界人代表と政府代表を迎え、投資懇談会ともなる予定。首脳会談の音頭を執り投資勧誘展を主催したのは産業開発省で、百億ドルの投資うち八十二億ドルはブラジルへ導入する予定だ。
会議場はアラブの習慣に従い、柔らかい雰囲気の応接間風に装飾が施された。展示場は売らんかなの商魂丸出しを避け、南米各国に二十五平方米のスペースを提供、投資を求めるインフラ分野をアピールした。
ブラジルのスタンドは、官民合同計画(PPPs)のルールや外資法、マクロ経済に関する資料を展示した。アラブ諸国の南米接近の活動は、水面下で二〇〇四年から始まっていた。今回の会議は、計画の具体化といえる。
すでに進行中のものでは、リビアが北東部地方の運河建設に四億五千万ドルを投資した。サウジ航空は、エンブラエルに十五機の航空機を発注。サウジ航空のライバルであるエミレートスは、〇五年末からサンパウロ市―ドバイ間に定期便を毎日就航させる予定。ブラジルのオデブレヒト建設会社は、カタールのドーハに新空港を建設する。
アラブ関係でメルコスルの合意待ちとなっているプロジェクトが三件あり、今回の首脳会議の最終日に調印予定となっている。そのうち二件は、エジプトとモロッコとの自由貿易と一部関税引き下げで、もう一件は、湾岸諸国六カ国との経済協力協定となっている。
フルラン産業開発相は、関係が冷えきっている亜代表団を迎えた。亜国は同首脳会議を二義的会議と位置付けしているらしい。亜国は、不満のくすぶる伯亜通商関係しか目にないようだ。亜国にとってブラジルの商法は、海賊商法だという。
一番乗りで到着したシリアのナジ・アルオトリ首相の一行は、シュラスカリーアへ直行し、政府が提供を禁じたアルコール飲料のカイピリーニャやウイスキーで舌鼓を打った。アラブ代表団は、ブラジリアは歓楽施設が少ないと不平を漏らした。