5月6日(金)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙五日】米国境警察は四日、メキシコから密入国を試み逮捕されたブラジル人が四月に四千八百人に達したと発表した。十月から九月までの一年間に一万七千六十三人が逮捕され、過去最高だという。四月のブラジル人密入国者数は一日平均百六十人、月間で昨年同月四百四十三人の十倍以上。四月の割合で続くなら、二〇〇五年の逮捕者総数は四万千五百人に達する見込み。メキシコ警察の不衛生な留置所は、乳児や幼児を抱え強制送還されたブラジル人女性で超満員だ。
密入国者の七〇%は、ミナス・ジェライス州出身者。続いてゴイアス州とパラナ州。メキシコ・シティ警察のイスタパラパ留置所は、米国境警察から強制送還された密入国者で超満員。幼児や乳児は酸欠のため呼吸困難で泣き叫び、パニック寸前の状態にある。メキシコ警察は特殊部隊を繰り出して、力の行使一点張りの扱い。
子供連れ家族や乳児を連れた夫婦などのブラジル人密入国者は日々、増えている。米国境警察は逮捕したら、国境でメキシコ警察へ引き渡す。逮捕者らは密入国者専用の留置所で国外追放の手配を待つ。留置所は悪臭を放ち、不衛生極まりないところである。
メキシコ・ルートの密入国者は過去二カ月間に激増した。この問題は現在、外交ルートと学者間で善処策を打ち合わせている。ミナス州から米国へ密入国し、錦を飾った者は多く、一獲千金の夢を抱くものが後を断たない。ドル安で航空券の値下げとなり、このチャンスを利用して密入国を希望する者が急増した。
テキサス州の都市によっては留置所が満員の場合、逮捕したブラジル人を初犯
であれば仮釈放にする。六カ月毎の出頭が義務付けられているが、九〇%は失そうする。同州では四月に二千五百人が拘束、二千四百人が仮釈放となった。米国内では乳児や幼児と保護者は、始末書だけで処理し、拘束が禁じられている。密入国には、幼児同伴が好都合という見方もある。
メキシコ空港の出入国管理局で入国を拒否されるのは、ブラジル人が最も多い。入国を拒否される旅行者の四七・八%がブラジル人だという。メキシコ国内で死亡したブラジル人は〇三年と〇四年合わせ六人とメキシコ警察から伯大使館へ報告があった。死因は説明されていない。
夢破れて帰国した密入国者が見たメキシコの留置所は、地獄絵さながらだという。小さな子供らが見ている前で、中国人が携帯電話を使用したとして、看守数人が意識を失うまで暴行を加えた。留置所の中は地面にマットを敷き、ウナギの寝床のように隙間のある限り詰め込まれる。水は飲料用が精一杯で、トイレは行列と糞尿の山。
社会学者らは、こぞってテレビドラマの影響を指摘する。ドラマは密入国奨励ではなく、ブラジルの社会問題にメスを入れるのが意図であったが、単純な聴取者は鵜呑みにしたに違いない。密入国あっせん業者は三万ドルを徴収するので、応募するのは底辺の人ではなく中の下とされる。悲哀の幻滅はひとしおである。